今回のエッセイを担当させていただく、WEELS編集長のBobです。
私は現在、田舎に暮らしながら会社を経営しています。
東北から上京し、東京におよそ15年住んだ後に移住。ちょうどコロナウイルスが中国で流行り始め、幸いにもまだ日本ではほとんど感染者がいないタイミングでした。
会社の住所として登録しているオフィスはあるものの、基本的に固定の場所を持たない働き方なので、いわゆるテレワークやリモートワークと呼ばれるワークスタイルとほぼ同じです。
そんな私が田舎に移住して約1年4ヶ月経過し、テレワークや場所を持たない新しい働き方が広く認知されてきた今、もっと多くの方に田舎でのテレワークのよさを知ってもらいたいと思うようになりました。というのも、生産性やストレス軽減など、あらゆる面でのメリットを感じているからです。
そこで本記事では、田舎でのテレワークをおすすめしたい3つの理由をお伝えしたいと思います。「地方移住に興味がある」「田舎でもリモートワークができるか不安」という方は、ぜひ最後まで読んでいただき参考にしていただければと幸いです。
田舎に移住したきっかけ
私は元々、東京で実店舗を数年経営をしていました。
それなりに上手くいき、売上もよかったのですが、次第に家賃をはじめとしたコストに疑問を感じ始めました。当時は店舗と自宅の家賃を合わせて30万円以上毎月支払っていたのです。
また、店舗経営となると、ほぼ毎日そこに常駐している必要がありました。もちろんスタッフはいましたが、店の運営システム上、オープンからクローズまで全て任せるということができなかったのです。そうなると場所の自由が利かず、自分の時間はほとんど確保できない生活となってしまいました。
「この先、何十年も持続できるとは到底思えない。」
そのときはすでに店舗がなくても収入をつくれると思っていたので、まずは店舗を閉じ、10ヶ月ほど東南アジアで生活しながらリモートワークでも生活ができるような基盤をつくりました。
その後日本に帰り、一時的にシェアハウスに住みながら、次に住みたい場所を考えていました。
「都会にも住んだし、海外にも住んだ。次はどこだろうか。」
そのときは、東南アジア生活の中で住んだ場所の1つ「バリ島」がとても強く頭の中に残っていました。自然に溢れ、ゆったり自分のペースで暮らしやすい場所はどこだろうか。海外も好きだけど、ビザなども問題もあるし、やはり日本のおいしい食事を毎日楽しみたい。
そう考えながら色々と住む場所を模索した結果、出た答えが日本の田舎への移住だったのです。元々は田舎で育った人間だったので、移住する前からある程度は暮らしのイメージが湧きました。
そして実際に移住し、幸いにも周りの人たちにも恵まれ、毎日あらゆることに感謝しながら心地よく生活しています。
意外にたくさんいる田舎移住テレワーカー
かつてのテレワーカーのよくあるイメージは、都会のスターバックスやコワーキングスペースなどで、MacBookを広げて仕事をしている人たち。しかし実際は都会だけでなく、日本全国のあらゆる田舎にテレワーカーが多く暮らしています。
私が暮らす地域にもテレワーカーと呼ばれる人たちが多く、なぜこの山に囲まれた田舎にこんなに集まっているんだろうと、ときどき不思議な気持ちになります。
SNSなどを見ていても、企業の従業員、フリーランス、会社経営者など形態は違えど、いわゆる山間地域に暮らしながらもオンラインで都会と繋がりながら、リモートで仕事をこなす人たちが多く見受けられるようになりました。
今は田舎にある空き家となっている古民家をシェアハウス活用したり、「ADDress(*1)」のように月額固定料金を支払うことで日本全国のあらゆる民泊施設に泊まり放題といったサービスが出てきています。そのため、テレワーカーにとっても地方に移住するハードルが以前よりも下がっていると言えます。
また、テレワーク移住による補助金や、移住して起業した人向けの支援金制度を実施している自治体もあるなど、テレワーカーを地方に呼び込もうという動きが活発化。近い将来、田舎でテレワークというものが珍しくなくなるときが来るかもしれません。
*1:ADDress
田舎移住してのテレワークがおすすめな3つの理由
田舎で実際にテレワークをしていて感じる大きなメリットは、以下の3つが挙げられます。
- 生活コストが圧倒的に低く、支出を抑えられる
- 自然に囲まれた屋外での仕事でストレスや疲労を軽減
- ライバルが少ないので、ローカル案件も受注しやすい
生活コストが圧倒的に低く、支出を抑えられる
都会と比べ、田舎では生活コストを大幅に抑えることが可能です。もちろん地域によっては都会より高くついてしまうケースもあるようですが、私の場合は車を2台所有していても東京にいたときの4分の1ほどのコストで生活ができています。
特に家賃の相場は都会に比べて圧倒的に低く、家は庭や畑のついた大きい一軒家が一般的。中には余っている空き家を無料で借りて暮らしている人たちもいます。
また田舎には徒歩でコンビニやカフェに行けるような地域も少なく、知らないうちにお金を使ってしまっていたということも減るでしょう。車で出かける際も、大体どの店舗にも駐車場があるか、もしくは近くに無料で駐車できる場所があるので、逆に便利にさえ感じることもあります。
さらに、テレワーク移住やワーケーションの推進を受け、空きビルや空き家などをリノベーションしたコワーキングスペースが全国の地方で増えています。利用料金もリーズナブルなところが多く、他のテレワーカーたちと交流できる楽しさもあります。
このように毎月かかる固定費が下がることで、金銭的な面だけでなく、心のゆとりが生まれるのも大きなメリットだと言えます。
自然に囲まれた屋外での仕事でストレスや疲労を軽減
PCでの作業は屋内で行うものという固定概念を持ちがちですが、ときどき外の空気を吸いながら仕事をするのもリフレッシュになり、私の場合は屋内よりも仕事がはかどることも珍しくありません。
特に田舎には緑のきれいな山々が広がり、気持ちよい風が吹き、川の流れる音や鳥の鳴き声が聞こえる環境が至る所にあります。アウトドア用のチェアとテーブルを持って好きなところに持っていけば、そこは自然の中のフリーオフィスとなります。
また、ベンチとテーブル、屋根のある東屋も、外ワークをするのにおすすめの場所です。私もお気に入りの東屋が3つほどあり、天気のよい日は積極的に利用しています。
フリーサイトのキャンプ場にテレワーカーが集まり、一緒に外で作業したりミーティングを行う。昼は河原でBBQを楽しみ、夜はテントで一夜を過ごすといったスタイルもリフレッシュ方法の1つ。このようなテレワークスタイルが可能なのも、田舎ならではの魅力です。
ライバルが少ないので、ローカル案件も受注しやすい
これはフリーランスの方向けの内容ですが、地方、特に田舎だと人口が少なく、且つ都会にあるような仕事で求められていたスキルを持っている人は一般的に少ないです。つまり、競合がいないので、その土地のローカル案件をかなり受注しやすいというメリットがあります。
例えば私の近所には、個人で写真家、動画クリエイター、Webエンジニア、Webマーケター、Webライター、デザイナーの方々が暮らしています。同じ町内で他に彼らのようなスキルを持った人たちがいないので、自然とローカル案件が彼らに入ってくるというのが当たり前の光景となっているのです。
さらに、田舎では誰がどのような仕事をしているといった情報が回るスピードが速いので、自ら売り込みを頑張らなくても自然と声がかかるケースも多いです。スキルさえあれば、都会からも移住先でも仕事を受注できるのは、収入を得ていく上で大きなポイントになると言えます。
田舎テレワークのデメリット
ここまでは全て、田舎でのテレワークのよい面にだけスポットを当ててお伝えしてきました。しかし、何にでも言えることですが、全てがよいというわけではありません。
私自身はさほど気にしてはいませんが、田舎テレワークの考えられるデメリットもいくつか紹介しておこうと思います。
- ポケットWi-Fiの電波が入らない場所がある
- 向上心がなくなる
- 景色ばかり見てはかどらない
ポケットWi-Fiの電波が入らない場所がある
今では田舎でもポケットWi-Fiの電波の入る場所は多くなりましたが、やはり山間エリアとなるとポイントによっては全く通信できないこともあります。リモートワークとなるとオンライン環境が必須という方も多いため、特に外で作業したいときは注意が必要です。
WiMAXのようなポケットWi-Fiよりは、クラウドSIMタイプのポケットWi-Fiのほうが電波の入る場所が多い印象です。また、地方によくある「道の駅」付近は比較的よい通信状態でインターネットが使える傾向にあります。
もう1点注意すべきこととしては、自宅にポケットWi-Fiの電波が全く入らないというケース。家のメインのインターネットをポケットWi-Fiにしようと考えている方は、前もって電波状況を問い合わせたり、お試し無料サービスを利用して確認しておくことをおすすめします。
向上心がなくなる
田舎に移住してテレワークをしていると、生活コストの安さから出る心のゆとりがマイナスのほうに作用し、仕事に対して「これでいいや」といった妥協や怠慢な態度になってしまう方がいるようです。
それが決して悪いと断言できるわけではありませんが、向上心を忘れたら次第に退化してしまうのは容易に想像できます。そうなってしまうと会社からの評価が下がってしまったり、フリーランスの方であれば仕事が入ってこなくなる可能性も考えられます。
結果を残せなければ必要な人材として見なされなくなるであろうことを考えると、どこに暮らそうとも与えられた仕事をしっかりこなしたり、期待以上のパフォーマンスを示すということを常に忘れずに取り組んでいきたいなと思っています。
景色ばかり見てはかどらない
私の場合は東屋などの外環境で作業すると、大抵はかなりはかどることが多いのですが、ときどきあまりにも気持ちよすぎてボーッとしてしまうことがあります。天気がよく、目の前に美しい山景色が広がっていると、そればかり眺めてて全く仕事をしていないということが稀に起きてしまいます。
そのような状態になってしまうと仕事モードに入るのは困難なため、自宅やコワーキングスペース、カフェなど、屋内に場所を移すことをおすすめします。ただ、仕事中に自然を眺めながらリラックスできるのも、田舎テレワークの醍醐味だということをお伝えしておきます。
最後に
これまでは地方移住のネックとして仕事がありましたが、つい先日出たニュース(*1)では、これからテレワーカーの地方移住を推進して「転職なき移住」を政府が推し進めていくようです。
近い将来、田舎でもテレワーク拠点となる施設が増え、移住だけでなく二拠点・多拠点生活なども一般的になる日も来るかもしれません。
WEELSでは今後も、
SDGs目標8「働きがいも経済成長も」
SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」
に関連する内容の記事で発信していきたいと思います。
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株式会社ハイナス・アンリミテッド代表 兼 WEELS編集長。ライティングやSEO対策を得意とし、日英バイリンガルの英会話トレーナーとしても活動。週末はもっぱらキャンプ。