ソーシャルグッドな発信で、SDGsの考えを広めるメディア「WEELS」

【リアル】都会から移住し田舎暮らし。移住先の選び方や暮らし、生活コストの話

都会から田舎へ移住した人たちの暮らしが、テレビやWebメディアなどで多く取り上げられるようになりました。しかし、移住先の決め方や生活費といったリアルな情報が少なく、田舎暮らしのイメージが湧かないという方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、実際に都会から田舎に移住した私Maiが、移住先をどのように選んだかや、暮らし、生活コストなどを実体験ベースでリアルに綴りたいと思います。田舎への移住を考えている方にとって少しでも参考になれば幸いです。

田舎に移住するまでのプロセス

2018年末まで東京で店舗経営をしていましたが、ほぼ毎日、朝から夜遅くまで働いているという状態でした。そんなオン・オフの切り替えがないライフスタイルを変え、もう少し外に出たいと思うようになり、2019年より10ヶ月ほど旅をしながら東南アジアの国々で暮らしました。

旅の目的は、

『生活の自由な時間を確保しつつ、オンラインで仕事が出来るようになること』

東南アジアから日本に帰国する頃には、オンラインの仕事だけで生活できるようになりました。そのため、帰国後は東京に住む必要性を感じなくなり、日本のどこか別の場所に拠点を持とうと移住を決意。日本全国の市町村をインターネットの情報を頼りにリサーチしました。

移住先の候補地と選んだポイント

移住先を選ぶ上で考慮したポイントは以下です。

  • 暖かいところ
  • 人口規模が多くて10万人程度
  • 県庁所在地までの距離が遠すぎない
  • 家賃が4~5万程度

そこで候補地として挙がってきたのが、

富山県高岡市
人口17万人
富山駅まで25分
家賃(1LDK/2DK)4.5~5.1万

②石川県
野々市市
人口5.2万人
金沢駅までバスで45分
家賃(1LDK/2DK)5.2~6.2万

能登町
人口1.7万人
金沢駅まで2~3時間、空港あり
家賃(1LDK/2DK)なし

③愛媛県
内子町
人口1.6万人
松山駅まで特急で25分
家賃(1LDK/2DK)4.7万

西予市
人口4.2万人
松山駅まで特急で1時間
家賃(1LDK/2DK)5.1万

宇和島市
人口8.6万人
松山駅まで特急で1.5時間
家賃(1LDK/2DK)4.3~5.2万

④山梨県北杜市
人口4.6万人
東京までバスで2時間
家賃(1LDK/2DK)5.6万

その他、長野伊那市、箱根、釧路、鹿児島が候補に出ましたが、気候や利便性などの理由から却下となりました。

また、①富山県と②石川県もやっぱり「寒いだろう!」となって除外。

更に④の山梨県は「簡単に東京に戻れてしまいそう」という理由で外しました。最後に残った③の愛媛県から、松山までの距離を考えて「内子町」が第一移住候補として残りました。

実際に訪れてみると、東南アジア生活で1ヶ月過ごしたバリ島のような美しい景観と心地よい風、明るくて温かな人柄に惹かれ、「ここに住んだら面白そう」と感じました。

そこで2020年初め、まだそこまでコロナが騒がれていない頃に、愛媛県内子町への移住を決めました。

スムーズな移住生活スタートのカギは「家」と「車」

移住の直前まで沖縄に短期滞在していましたが、その間に内子町で出会った方とコンタクトを取り、最初の1ヶ月の住まいと車を確保してもらいました。

移住するまでは駅やスーパーから近い中心部のアパートを借りて、車はなくてもいいかな、などと考えていました。しかし、インターネット上に載っているアパート情報を見ても東京にあるようなアパートとほとんど変わりはなく、違いは価格と広さくらいでした。

そこに住む生活をイメージするとあまり代り映えがしない気がして、それならいっそのこと中心部から離れた場所で空き家を探そうと考えが変わりました。

仮住まいさせてもらっていた家の方に空き家を何件か紹介していただき、なんと移住2日目に希望に合う賃貸の一軒家を契約することができました。また、車も最初にレンタルしていたものをそのまま購入。地域の方が快く迎え入れてくれたことで、非常にスムーズに移住生活をスタートさせることができました。

6つのカテゴリーから考える移住先の選び方

移住する上で物理的に必要なのが、

  • 住まい
  • 仕事

また、精神的に考慮した方が良いのが、

  • 気候
  • 人柄
  • 人口規模

これら6つのカテゴリーについてそれぞれ考え、どのように移住先を選べばよいかを解説していきます。

住まい

地方に空き家がたくさんあるのは周知の事実ですが、すぐに住める(物理的に&大家さん的に)物件は限られています。もともと人に家を貸す文化のない所がほとんどなので、いざ貸すとなった時の片付けや手間を嫌がる大家さんは多いです。また、自治体が把握している空き家数も限られています。

そのため、もっとも理想的でスムーズに借りられる方法は、地域の人に家と大家さんを紹介してもらうことです。集落や自治会単位で人間関係が成り立っている所が多いので、住みたい地域の人や、顔が広い人と知り合いになれるとベストです。

人口50万人以下の地域では車は持っていた方が良いでしょう。不便といわれる田舎ですが、車があれば都市部より便利なこともたくさんあります。

通いや短期で滞在している間は「ニコニコレンタカー」や「ガッツレンタカー」などの格安レンタカーを利用し、いざ移住するとなったら自分の車を購入するのがオススメです。

田舎には車屋さんがたくさんあり、中古車であふれているので、希望の予算で見つけるのも難しくないでしょう。

仕事

オンラインで仕事をしているからどこでも大丈夫という方も多いですが、そうでない方にとっては移住を検討する上で仕事のことも考えないとなりません。実際に、移住を考えている方から真っ先に聞かれる質問は「仕事ってありますか?」です。

正直仕事はいくらでもあるなと感じます。実際に私が移住した後、1年の間に同じ地域に5名の移住者が来ましたが、それぞれ自分の仕事を見つけて暮らしています。

ただし、家と同じでインターネット上で得られる情報は限られています。現地に来て探す方が効率がよかったり、希望に合った仕事を見つけやすいこともあります。気に入った土地に何度か足を運んで、地域の人と関係を作る中で仕事を見つけている人もいます。

可能であれば、2〜3か月働かなくてもよい状態で現地に滞在するのがおすすめです。その間に色々な人に会ったり、興味のある所に出向いたりすることで扉が開くような感覚があります。

気候

今までの経験から自分が「暑いのが好きか」「寒いのが好きか」を基準に、年間気温や降水量のデータを比較して選んでいきます。

私は温暖な気候がいいと思って愛媛を選びましたが、住んでみて気がついたのは「標高」によって気候が違うということです。今住んでいるところは標高180mほどの場所なのですが、夏は朝晩涼しくて、冬は数回雪が降ります。

以来新しいところに行くたびにGoogleマップで等高線を確認したり、方位磁石アプリで現在地の標高を確認する癖がつきました。

また、風の流れも重要です。川に近いか、山に近いか、海に近いか、によって風の量が変わります。日本は湿気が多いので、風がある程度吹くところの方が心地よく感じるでしょう。

人柄

地域によって人柄は違います。大きく分ければ都道府県で、細かく分けると集落ごとでも雰囲気が違うと感じます。これはやはり短期的に住んでみたり、その土地の人と話してみるのが一番だと思います。

分かりやすいのが『話し方、声の大きさ、話すテンポ』です。もちろん個人差はありますが、その地域で過ごしていると「ああこのテンポ合うな」とか、「声が大きくてすごく前のめりだな」とか、逆に「大人しいけどはっきり喋るな」など様々です。

聞いていて、または話していて、『話し方・声の大きさ・話すテンポ』に心地よさを感じる地域であれば、ストレスなく溶け込みやすいと思います。

人口規模

目安として50万人以上が政令指定都市、5万人以上が市、5,000人以上が町、それ以下が村です。

コンビニやスーパー、病院、保育園などの数は人口に比例します。人口を意識していくつかの市町村に訪れてみると、自分が望む規模感が見えてくるはずです。

分かりやすいのは上に挙げた「政令指定都市」、「普通の市」、「町」にそれぞれ訪れてみることです。

政令指定都市は電車やバスが発達していて、ある程度のことが自転車圏内でできたりします。市はバスはあるけど、たいていは車移動で、幹線道路にでると商業施設やチェーン店があります。町はバスは少なく、コンビニまで車で20~40分、チェーン店よりは個人商店が多いイメージです。

気候・人柄・人口規模を掛け合わせることで、自分に合った地域を見つけやすくなるでしょう。

3つのカテゴリーで見る移住後の生活について

私が住んでいた東京の中の人口100万人の地域から、愛媛の田舎にある人口1.5万人の地域へ移り住んで、生活にどのような変化があったかを3つのカテゴリー別に紹介します。

日々の買い物

東京では仕事帰りに毎日スーパーに行ってその日の食材を買っていましたが、内子町に来てからは車があるおかげでほぼ週に1回と、効率よく買い物が出来るようになりました。野菜はおすそ分けで頂いたり、自分で育てたり、近くの道の駅で新鮮な野菜を調達できるので、食材に困ることはありません。

野菜が驚くほどに美味しいので、調味料もシンプルになりました。塩、砂糖、みりん、酒、しょうゆがあればたいてい美味しく食べられます。化学調味料や刺激のある調味料に舌が敏感になったように感じます。

日用品や薬、DIY用品も週に1回の買い物で同時に済ませています。ウィンドウショッピングをする機会が少ないので、生活用品以外のものを買う機会が減りましたが、必要があればAmazonなどのオンラインショッピングを利用しています。

休日の過ごし方

移住してからちょうどコロナウイルスが流行り始めたということもあり、あまり遠出をせず身近な場所で過ごすようになりました。

田舎で暮らし始めてからすっかりハマっているのがデイキャンプです。車があるので荷物の運搬が楽で、少し天気が傾いても対応できます。

道すがら山に落ちている木や枯れ葉を拾って、道の駅で新鮮な野菜を買い、ゆっくりバーベキューを楽しみます。食べ終わった後は読書をしたり編み物をしたり、風を感じて鳥の声を聴いたりしながら好きな時間までくつろいでいます。

ご近所づきあい

ご近所づきあいはとても大切だなと思います。人が少ない地域では、そこにいる人で自分たちを守る「自警」の精神が根づいています。

そのため、「まめな挨拶」、「弱者を置いていかない」、「ちょっとの変化に気がつく」といったことを無意識的にやっています。その中でお互い心地よく過ごすために、適度な距離感を保ちつつ、挨拶をしたり話しをしたり、おすそ分けをたくさんいただいた時は分け合ったりと、日常的にコミュニケーションをとることが大切です。

また、自治会や消防団、○○の会など、地域には仕事以外の役割がたくさんあります。全てをこなしていては長続きしませんが、一人ひとりが自分に出来ることをすることで地域は成り立っています。自分に出来る役目を見つけつつ、自分自身の生活も大切に、そのバランス感が大切です。

田舎暮らしでの出費について

移住して1年半が経ち、日々の支出がどのくらいかが分かってきたのでここでシェアします。

<月々の支出(2人暮らし)>

家賃 3万
食費・日用品費 4万
通信費 1万
光熱費 1万
車両費(ガソリン代・自動車保険) 2万
ーーーーーー
約11万円/月

この他に1年の中でかかる費用として、

自治会費 1.8万
車両費(点検・タイヤ交換など) 4万  
ーーーーーー
約5.8万円/年

これはあくまで一例で、家賃については同じ町内でも物件や地域によって0~5万円まで幅があります。また、我が家は軽自動車1台ですが、普通車や2台持ちなどでそれぞれ支出も変わってきます。

ただ、東京に住んでいた時は家賃だけで9万円の生活だったことを考えると、田舎に住むと日々の出費はかなり少なくなるなという印象です。予算の見当を付けるときは、家賃に車にかかる出費を加算して考えるとイメージしやすいと思います。

地元の方は店や物資が限られている分、ものを長く大切に使ったり、あるものを利用することが習慣となっているため、お金を使う場面がとても少ないように感じます。その分おすそ分けをし合ったり、あるものを分ける文化が定着していて、そのやり取りの中でお金の代わりとなる「信頼」を構築しているように思えます。

移住前と移住後で変わったこと

移住前と移住後の生活を比較すると、いくつか変わった点があります。ここでは、食生活・ストレス・インドアとアウトドアの3点を中心に説明します。

食生活

野菜がとても美味しく、身近に手に入るので、毎日食べる野菜の量が確実に増えました。それと並行して自動的に肉魚の量が減り、食卓の色が変わったように思います。

同時に外食で食べるものも自然と変わりました。東京にいた時はアジア料理、イタリア料理、ラーメン、おしゃれカフェなどに行くことが多かったのですが、こちらに来てからは個人店のうどん屋か定食屋がほとんどになり、内食・外食ともに和食が中心に変わりました。

ストレス

東京に居た時と比べると、日常的に感じるストレスの量が明らかに減りました。もともと楽観的なタイプなのでストレスを感じない方ですが、移動したり歩くだけで感じる情報量(目・耳・鼻から自動的に入ってくる)は無意識のうちにストレスになっていたことが分かりました。

移住してからは自分に与えられている空間が常に広く、風・生き物の鳴き声・四季の移り変わりなど、五感で得られる情報がとても豊かで、ここに身を置くだけで癒される場面がたくさんあります。

何より「ストレス」という言葉を聞くことも発することも、ここに来てから全くなくなりました。コロナウイルスの流行で窮屈な世の中になってしまっている今こそ、自然の中に身を置く時間を作って、五感を癒して欲しいなと思います。

インドアとアウトドア

田舎はあらゆるところにフリースペースがあるので、外で過ごす時間が格段と増えました。

東京にいた時はお金を払ってカフェに行かないと自分の居場所を確保できないと思っていました。本来は東京にも公園や図書館など利用できる公共空間がたくさんあるにもかかわらず(笑)

東南アジアに暮らしていたころ、暑さからか外で過ごす現地人が多かったです。真似して外で座ってみると、心地よい風が吹いてなんて気持ちいいんだろうと気づかされました。

移住してからは何もないところに椅子を置いて編み物をしたり、東屋(あずまや)と呼ばれる屋根付きの休憩所でパソコン仕事をしたりと、日常的に外で過ごしています。「PUBLIC HACK: 私的に自由にまちを使う | 笹尾 和宏 」の本を読んでからは、身近で出来るパブリックハックを日々探しています。

移住してから不便だと思うこと

幸いながら、不便だと思うことは今のところありません。

一番困ったのはお風呂の給湯器が凍結し、朝シャワーを浴びれなかったことくらいです。慌ててガス屋さんに電話をすると「日が出てきたらそのうち溶けるのでしばらく待ってみてください」とのこと。

「えーー!!」とビックリしましたが、言われた通り待ってみると数時間で使えるようになりました。それが1年間で3日ほどありましたが、そのおおらかさに学ぶことが多く、私にとっては不便のうちには入りません。

地方移住は通過点

私は直感的に決めた移住先とたまたま相性が合い、とても気に入っているので、ここを日本の拠点にできたらなと考えています。でも、移住は人生のうち何回あってもいいし、元居たところに戻ることも選択肢の1つとして残しておいて良いと思います。

当然ながら地域の人はずっといて欲しいと思っているし、移住してきたのにまた引っ越してしまうのを寂しく思うでしょう。それでも彼らは彼らでそこに住むことを選択しています。人それぞれ人生には様々なことが起こり、変化していきます。その時考え方が変わったり、居場所を変えたりすることは何も不自然なことはありません。

また、物理的に叶うのであれば2拠点、3拠点と居場所を持って、時期によって移りながら住むことだって考えられます。核家族世帯や単身世帯が増えたことで家の在りようが変わったように、一世一代のお買い物と言われた「マイホーム」の形も今後変わっていくでしょう。

「住まい」「住所」「居場所」の概念もどんどん変化しています。この変化に柔軟に対応しながら自分にとって心地よい形を探り、様々な暮らし方があることを受け入れることで、ますます住みやすい国になっていくと思います。

引退後のために今の時間を使うのではなく、今この時を楽しめる社会になるように、移住がその一歩になることを願っています。

PAGE TOP