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農家が食品ロス解消のためにできること。現状や対策も紹介

私は農家です。生産したものはすべて消費してもらいたいと思っています。しかし、世界的には食べられずに捨てられる食材・食品「食品ロス」がもたらす環境や経済への負荷が問題になっているのが事実です。

生産したものは捨てることなく、できるだけ多く消費してもらいたい。どの生産者でも同じ想いがあるのではないでしょうか。

食品ロスを少しでもなくしていくためはどうすれば良いのか。現状や問題点をふまえながら、農家ができる対策を紹介していきたいと思います。

食品ロスの現状と環境への影響

まずは、食品ロスの現状と環境への影響について軽く触れていきたいと思います。

世界の食品ロスと日本の食品ロスの現状

世界の食品ロスと日本の食品ロスの現状

世界の食糧生産量は年間約40億トンと言われています。

そのうち食品ロスを含んだ食品廃棄物量は約13億トン。つまり、生産された食料の約1/3が捨てられているのが現状です。

また、以下のような理由から、先進国ほど食品ロスや食品廃棄率が高いとされています。

  • 発展途上国からの輸入のため過剰生産が起こりやすい
  • 厳しい外観品質基準があるため、破棄される生鮮食品が多い
  • 再利用するよりも捨てた方がコストを抑えられる
  • 経済的余裕から買いすぎた食料を簡単に捨てられる

ちなみに、日本の食品ロス率は現状はなんと世界ワースト6位。食品廃棄物が年間約2250万トン、食品ロスに限ると約612万トン(東京ドーム約5杯分)あると言われています。

また、食品ロスは先進国に多いというだけで、発展途上国にも食品ロスの問題は存在します。インフラ不足による原材料の腐敗など、流通や保存の設備不足によるロスがあるのが現状です。

参考:農林水産省 食品ロスの現状を知る

食品ロスがもたらす環境への影響

食品ロスがもたらす環境への影響

では、食品ロスの何が問題なのでしょうか。

廃棄する食品は焼却処理されることが一般的です。つまり、食品を焼却する際に排出されるCO2が、地球温暖化を促進する要因の一つになっていると言えます。食品ロスが増えれば増えるほど、焼却処理が必要になり、二酸化炭素の排出量を押し上げてしまうことになります。

需要があるからと、食糧不足に喘ぐ貧困国からの大量の食料輸入は、その国の飢餓を助長することにもなるでしょう。輸入することによる物の動きは、CO2を排出する動力を活用しているため、地球温暖化も促進していると考えることができます。

見えない農産物の食品ロス

見えない農産物の食品ロス

農家が考える見えない食品ロスにも少し触れたいと思います。

私は農家の立場から、出荷されずに畑で破棄される野菜や果物は食品ロスに当たると思っていました。

しかし、日本での食品ロスの定義は、収穫し出荷してからのカウントであることとなっています。規格外や、生産過多で価格が付かず破棄された野菜や魚介は、612万トンの食品ロスの中には含まれていません。

このように、見えない食品ロスが一次産業の業界で存在しているのが現状なのです。

農家ができる農産物の食品ロス削減への取り組み

農作物の食品ロスを減らすためにはどうすればよいでしょう。ここでは農家ができる対策について考えていきます。

消費ニーズを考えた作付け

消費ニーズを考えた作付け

農家は経営者なので、消費者が必要としている野菜や果物の作付けを考えることが必要です。

ニーズにあった生産をすることで、売れ残りや、生産過多で価格が付かないなどのリスクを下げられます。それが結果的に畑で破棄されるなどの、見えない食品ロスを削減することに繋がります。

どれぐらいの面積に、何を栽培するのか。品種だけでなく、大きさや収穫時期などについても消費者のニーズを考えることが大切です。

多様なこだわりが詰まった作付け

多様なこだわりが詰まった作付け

消費者の好みが多様化する中、作付けを考える上で、自分が何にこだわりを持って生産するかを考えることも重要です。こだわりが詰まった多様な農作物が広まり、多様な消費者のニーズにマッチすることで、見えない食品ロスの削減に繋がることになると考えるからです。

  • 広い面積に一品種の野菜をたくさん栽培する
  • 一定の面積を区切り、少量多品目を栽培する
  • 規定範囲内の農薬に頼る
  • なるべく農薬に頼らずに生産する
  • 肥料は化学肥料と有機肥料の混合
  • 有機肥料しか使わない

など、挙げればキリがないですが、様々な栽培方針を組み合わせることで、個々の農家のこだわりが生まれてくるでしょう。

地産地消が農産物のロスを減らす鍵

地産地消が農産物のロスを減らす鍵

芋類などのような適正な貯蔵をすることでうまみ成分が倍増する野菜もありますが、葉物野菜やナス、ピーマンなどの果菜類は、収穫した時から劣化が始まるのが一般的です。

現在の日本の農業は、土地のある田舎で生産した物を、人口の集中する都会で販売する物流システムが一般的です。市場の競りによって価格が決まるケースが全体生産量の大半を占め、農家が価格を決めることができるのはほんの一部です。

ある地域で生産過多になった場合、同じ県内で生産された野菜よりも、遠くの他県で生産されて物流コストや物流時間のかかった野菜が安く販売されているような矛盾が生じている現状があります。

また、外観品質基準を過剰に重視し、流通に乗らない農作物が多くなることも見えない食品ロスを助長する要因となっています。

そのため、地域で収穫された物をその地域で消費する。この地産地消の考え方や、形が不揃いでもその野菜の個性として受け入れることが、包装コストや環境負荷の削減に繋がります。

農家がそのことを学び、消費者へ発信していくことで、見えない食品ロス削減に貢献できるでしょう 。

こちらの記事もチェック:【SDGs】地産地消とは?メリットやデメリット、個人でできることも

農家ができる食品ロス対策を考えてみよう

これまでに述べたように、農家が日常的に行っていることが、実は自然に食品ロスを削減する取り組みとなっています。

学ぶこと、消費者のニーズを知ろうとすること、こだわりを持ち続けることを常に考えていないと、思い描くように見えない食品ロスを減らすことはできないでしょう。

そして、そのことを消費者に伝えることも大切だと思うのです。

2015年国連総会で採択された、「持続可能な開発の為の行動目標」(通称:SDGs)として、17の世界的目標と169の達成基準が示されました。

その中の12番目の目標に【つくる責任つかう責任】と掲げられています。

「持続可能な生産消費形態を確保する」ために・・・

自分たちの作った農産物は、こんなだわりを持っており、こんな想いで栽培していることを伝えること。それが、作り手である農家のできる食品ロス削減の第一歩になるのではないでしょうか。

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