ソーシャルグッドな発信で、SDGsの考えを広めるメディア「WEELS」

人口500人の離島で目指す再生エネルギー起業。子ども向けの理科実験教室から高まる環境への意識

地球温暖化による様々な影響が懸念される中、再生エネルギー分野での事業立ち上げを目指す人たちが目立ち始めています。

三重県鳥羽市の離島に移住し、地域おこし協力隊として活動している横尾総一朗さんもその一人。着任してからわずか1ヶ月で、地元の小学生を対象にした再生エネルギーに関する理科実験教室を行い、数々のメディアに取り上げられるなど注目を集めています。

今回はそんな横尾さんが移住したきっかけや、起業のための取り組み、活動への想いなどをインタビューしました。

再生エネルギー分野での起業を見越して離島へ移住、地域おこし協力隊へ

引用元:三重県ホームページ

私は現在、三重県鳥羽市の地域おこし協力隊として活動しています。居住地は「菅島」という離島で、人口はたった500人ほどの地域。大学卒業後、新卒として今年7月に協力隊に就任し、この地に移住してきました。

学生のときから再生エネルギー関連の事業を立ち上げることは決めていて、ベンチャー企業 や大企業、学生起業など、色々な道を考えました。ですが、分野的に官民の間のポジションでないと難しいだろうということも次第にわかってきました。

そこで目を付けたのが、国立公園・離島・地域おこし協力隊の3つです。

官民の間にポジションを置くことを考えると、国が環境保全のために国立公園として指定するエリアは条件として外せませんでした。また、ある程度人が限られている離島のほうが、事業を立ち上げやすいのではないかと思いました。さらに地域おこし協力隊の制度は、地方自治体の人間としても活動でき、自分が実現させたいものと合致します。

これをベースにリサーチを進めていく中で見つけたのが、菅島という三重県の離島です。オンラインで関わる中、「地域を盛り上げたい」と島民と行政が一体となって協力隊の募集が始まり、応募したところ採用してもらえることになりました。

大学は東京だったので、現在の環境はだいぶ異なります。ただ、動物系の分野を専攻し、研究で山奥に泊まり込むといったこともしていたので、環境の変化による影響も少なく、楽しく生活できています。

地元の小学生を集めて理科実験教室を開催

今回、私の活動を島民の方々に認知してもらおうと企画したのが、7月28日に開催した小学校での理科実験教室です。

そこでは地元の小学生を集めて、

・海洋漂流ゴミのプラスチックから石油成分の物質を生成する実験
・雑草から調理用ガスを生成する実験

を行いました。

鳥羽市の離島は、日本でも有数の海洋漂流ゴミが確認される地域です。

それをただゴミとして捉えるのではなく、

「石油からできているプラスチックをまた石油に戻して再利用できる」
「ゴミが流れ着く、ではなく、価値のあるものが届く」

と考えられるようになるだけで、子どもたちにとっては大きな学びとなります。

1〜6年生までの子どもたちが対象だったのですが、低学年の子たちは「燃えてる!」「溶けてる!」といった物体の変化に、高学年の子たちは「プラスチックからオイルができるなんて知らなかった」といった感じで、年齢によってリアクションに違いが見られました。

子どもは感覚や直感に優れていて、色々なことに対して「なんでだろう?」という疑問を持ちます。そんな感性豊なうちに再生エネルギーに触れてもらうことは、島の将来を担う彼らや、島の未来にとってとても意味のあることだと考えています。

この「未来の事業の授業」が彼らの中で何かしらの変化をもたらし、将来的に自分の事業に関わったり、一緒になって考えてくれるような状況がつくれたら嬉しいです。

島全体から賛同を得るための第一歩は、子どもから大人へ

再生エネルギー分野での起業をする上で欠かせないのが、同じ島に暮らす地元民の人たちに自分の活動を理解してもらうことです。一人ではできることではなく、島全体に協力してもらうことがとても重要な鍵となってきます。

とは言え、外から移住してきた人間が突然そんなことを言い出しても理解は得られにくい。実績も信頼もない状態で大人たちにプレゼンをしても、よいスタートは切れないだろうと思っていました。

一方で、過疎化の進む地域はどこも、「子どもがいるから大人も頑張ろう」という意識があるように思えます。この島も例に漏れず過疎地域であり、子どもたちを中心に考えて大人たちが動いています。

子どもたちが今回の理科実験教室で体験したことを大人たちに話すことで、島全体が私の活動を知り、関心を持ってもらうきっかけとなる。このような宣伝効果も狙っての開催でした。

実際に、イベント後は地元民の人たちからの私への見方も変わったように思えます。それまでは小学生と一緒にフットサルをしたり、肉を安く卸すといった関わり方だったので。新聞に取り上げてもらってからは皆さんがフレンドリーに話しかけてくれたり、「この島を環境をよくするために来てくれた」と私の活動に賛同してくれる人も増えました。

今後の展開

今回の理科実験教室はいくつかの新聞社に取り上げてもらえたので、これを今後の起業の糧にしていけたらと考えています。特に研究機関や、SDGsで事業展開したい企業との連携を重視していく予定です。

そのためにも、島全体からの協力を得ながら、色々なところから声をかけてもらえるようなものを少しずつ築きあげていきたいと思います。

<横尾さんの活動はこちら>

Twitter

Instagram

菅島の未来を考える会

PAGE TOP