持続可能な開発目標(SDGs)のゴール13には「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる。」とあり、その中で「地球温暖化」も解決すべき問題の1つとなっています。
「CO2削減」「温室効果ガス」などの関連キーワードとともにニュースなどで度々取り上げられる地球温暖化ですが、なぜ平均気温が上がっていくのか、温暖化が進むと地球はどうなるか・どんな被害が出ているのかなど、具体的に何が問題なのかよくわからないという方も少なくないでしょう。
そこで今回は、地球温暖化の現状や、地球温暖化を防ぐために私たちができることなどを解説していきたいと思います。
地球温暖化はなぜ起きるのか
地球の気温は元々低く、平均気温は−18℃と生命が暮らしていけない環境。実は、快適に暮らしていけるのは大気中にある「温室効果ガス」のおかげなのです。
参照:全国地球温暖化防止活動推進センター – 温暖化とは?地球温暖化の原因と予測
太陽の光が大気圏を通って地面が光が吸収
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温められた地面から赤外線となり熱が出る
↓
大気中の温室効果ガスが熱を吸い取る
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一部の熱を地球に向けて放出し、地面や大気を温める
上記が繰り返されることで、地球上の生き物が生きていける気温になっています。
しかし、産業発展のための生産や焼却、森林伐採などが増えることによって二酸化炭素・メタン・亜酸化窒素・フロンといった温室効果ガスが大量に放出。濃度が高くなることでより多くの熱が地球に戻ってしまい、平均気温が上がっていくという現象が起きてしまうのです。
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地球温暖化が進むとどうなるのか
産業革命以降の18世紀から石油や石炭などの化石燃料をたくさん燃やし始めたことで、地球温暖化の主な原因と言われている二酸化炭素が放出される量が増え始めました。
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」と呼ばれる地球温暖化の国際研究機関は、もしこのペースで地球温暖化が進行すれば、2100年頃には地球の平均気温が1.1〜6.4℃上昇、海面が18~59cmも上昇すると発表しています。
この状況を打破するために、2015年の第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で、温室効果ガス排出削減等のための「パリ協定」が採択。「産業革命以後の平均気温の上昇温度を2℃未満に保ち、1.5℃近くにまで抑える努力をする」ということを世界の目標として掲げています。
ちなみに、2℃と1.5℃だと大して変わらないように思えますが、0.5℃の差でも海面上昇・酸性雨・干ばつ・洪水などの極端な気象災害が増加。このままだと2100年までに海面上昇が10cm程度高くなり、影響を受ける人数は1千万人も多くなるといった予測もされています。
このまま温暖化が進むと2100年はどうなるか
もし、この目標が達成されず温暖化が進んだ場合、日本で考えると2100年にはどんな状況に落ちいると考えられるでしょうか。
・夏の平均気温が全国で40℃を超えるほど暑くなる。
全国的に夏は140箇所で40℃を超え、最高気温が35℃を超える。
猛暑日は60日を超える地点が多く予想される。
・熱中症など、暑さのストレスで1万5000人が亡くなることも予測される。
熱波により熱中症リスクが高まり死亡率や疫病が増える。
・水害により農作物の収穫量やも品質にも悪影響を及ぼす。
また、日本を含め世界的にも以下のような状況が起こりうると考えられています。
・陸や海の生態系の破壊
・干ばつによる農作物の収穫量減少
・食糧不足や健康障害、生計崩壊などのリスク
・局地的な大雨や台風による被害
なお、上昇温度が上がるにつれ、リスクの重度も以下のように変わっていくとされています。
参照:World Wide Fund for Nature(世界自然保護基金)
地球温暖化による実害例
地球温暖化により、実際にどのような影響が出ているのでしょうか。ここでは「水・生態系・暮らし」の3つに分けてご紹介します。
水の問題
海面の上昇
地球温暖化の影響で海水が膨張したり、北極海などの氷やグリーンランドなどの氷床が溶け、約100年で海面が16cm上昇するという現象が起きています。上昇率は高くなっており、マーシャル諸島などの南太平洋の島々では海岸が侵食され、国土全体が海に沈んでしまう国が出てくるという懸念もあります。
生活用水の枯渇
乾燥地域に住む人々や、氷河・雪を生活用水としている人々にとっては、温暖化により生活用水が枯渇するという懸念があります。また、氷河が溶けた水でできる「氷河湖」が決壊し、大規模な洪水へと繋がる恐れも指摘されています。
さらに氷河が溶け切ってしまうと、氷河湖からできた川は水源を失い、水量が減ることによる水不足が起きる可能性も。そうなると作物の栽培なども困難になり、食糧危機という問題にも繋がりかねません。
気象災害
温暖化によって地表や海水から蒸発する水分が多くなり、それによって台風や豪雨といった現象が増加し、洪水や浸水被害に悩まされることがあります。
特に都市部では水害以外にも地滑り・大気汚染・干ばつからの水不足など、経済や資産だけではなく生きていくこと自体にリスクがある環境になることも懸念されます。
生態系の問題
野生動物の絶滅危機
温暖化や異常気象による環境の変化により、野生生物たちも生命を脅かされていると言われています。
IUCN(国際自然保護連合)が発表している「レッドリスト」によると、世界の絶滅危惧種は約37,000種以上いると言われており、全評価種の27%にも相当します。
日本に生息する絶滅危惧種(*1)も2000年頃から急増。2000年には15種だったのに対し、2010年には1000種を超えました。また2015年には2000種を超え、2020年には海洋生物も合わせて3772種となりました。
*1:哺乳類・鳥類・両生類・爬虫類・汽水/淡水魚類・昆虫類・陸/淡水産貝類・その他無脊椎動物・維管束植物・蘚苔類・藻類・地衣類・菌類
生態系の変化
生き物の絶滅危機は生態系の破壊にも繋がっています。
地球温暖化により植物は生息地を変えるか、もしくは環境の変化に対応できず絶滅することも。そうなると、その植物を必要としていた虫や動物も生息域を変えたり、変化に対応できず減少や絶滅する可能性があります。
乾燥が進む地域では森林火災が増えることが懸念され、野生生物の生息地が失われることも考えられます。火災の長期化により、森林が元に戻る力さえ燃え尽くす可能性もあります。森林の消失で大気中の二酸化炭素量が増え、地球温暖化をさらに進行させることになります。
海の生態系では、気温と同様に海水温の上昇により影響がでています。特に水温変化に弱いサンゴは、地域によっては死滅することも懸念されています。また、大量の二酸化炭素が海に吸収されると海中の酸性化が加速し、サンゴをはじめ、動植物プランクトン・貝類・甲殻類なども悪影響を受けてしまいます。
私たちの生活
農業への影響
異常気象により農作物の収穫量が減ると、農家は経済的に大きな打撃を受けることになります。また、収穫量が減ることにより価格が高騰し、私たちの家計にも少なからず影響を与えます。また乾燥地域では地面の水分量も少なくなり、干ばつに悩まされる農地も増える可能性が高いと言われています。
農作物の栽培方法は気候変化に対応していかなければなりませんが、例えばビニールハウスで温度管理をして栽培するなどの対策をしても栽培費用がかかるため、小規模な農家は変化に対応しきれず生産量が低下する可能性があります。
感染症などの病気や飢餓
食糧の生産高が下がることで食糧不足が起き、特に貧困状態にある地域の多いアフリカでは、栄養失調による病気や飢餓状態になる人がますます増えるという可能性も指摘されています。
またマラリアやテング熱などの感染症を媒介する蚊は、日本だと沖縄の南西諸島にのみ生息していますが、温暖化により気温が上がることで生息域が拡大。日本国内でも免疫を持たない人々に感染症が拡大する恐れが出てきます。
地球温暖化を防ぐために私たちができること
このままだとますます加速してしまうであろう地球温暖化の問題。国連や各国政府や企業による大きな取り組みも必要ですが、私たち1人ひとりができることから始めることでも問題解消へ貢献することができます。
家庭でできること
参照:温室効果ガスインベントリオフィス 全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト
上記の表を見ると、家庭で二酸化炭素の排出量を削減できることは色々ありそうです。
例えば、エアコンの設定温度に関して言うと、冬に1℃低くするだけで約10%、夏に1℃高くするだけで約13%も消費電力を削減できると言われています。もちろん寒さ・暑さに耐えながら過ごすべきではありませんが、知っているのと知らないのでは大きな差です。
また、使っていない電化製品の主電源を切ったり、コンセントからプラグを抜くだけでも待機電力消費の削減に繋がります。誰も見ていないテレビの付けっぱなしといった電気もこまめに消すことで、二酸化炭素の排出量削減に貢献できます。
その他にも、家電の買い替え時は省エネルギー製品のものを選んだり、電力会社を再生可能エネルギー発電をしているところにするなどもできることの1つだと言えます。
節水も実は二酸化炭素排出量の削減に繋がります。というのも、私たちが普段使う水道水は、浄水場できれいにしたり各家庭に届くまでにたくさんのエネルギーを使っているのです。水を出しっぱなしにしがちな皿洗いなどでは、すすぐときのみ水を出しておくだけでも使用料を抑えることができます。
外出時にできること
住んでいる地域やライフスタイル、年齢にもよりますが、車の使用頻度を少なくすることも地球温暖化防止に繋がります。また近年では電気自動車の普及も広まっており、二酸化炭素の排出量削減に大きな期待が持てます。
また、レジ袋の有料化により普及したマイバックを持ち歩くことも私たちができることの1つです。プラスチックごみの量を減らすことで、燃焼による温室効果ガスの削減に繋がります。近年ブームとなっているキャンプなどでも、使い捨てのプラスチック製品ではなく、再利用できるものの使用がおすすめです。
エコキャンプを楽しむ!環境に優しいキャンプのために私たちができること
とても基本的なことですが、このような意識を1人ひとりが持つことで社会全体に広まり、それによって国や企業を動かす力になることもあります。ぜひ今日からでも少しずつ実践していただき、温暖化防止に貢献してもらえたら嬉しいです。
最後に
いかがでしたでしょうか?地球温暖化の問題は、すでに起きている現象については適応していきつつ、少しでも状況が悪化しないようにしていくことが重要です。1人でも多くの人にこの問題に関心を持ってもらえるよう、WEELSでは今後も地球温暖化について発信していきたいと思います。
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インテリアスタイリングやファブリックの仕事を経て、結婚を機に都会から田舎暮らしへ。今は山暮らしをしながら3姉妹の子育て中。趣味はお菓子作り。