日本でも度々メディアやSNSで取り上げられる「男女格差」の問題。2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)でも、目標5に「ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられています。
女性差別・蔑視をやめ、平等な立場で社会生活を営むべきであるというのが国際的な認識ですが、今もなおその格差は完全には是正されていません。
残念なことに、日本の男女格差はG7(主要7カ国)の中でワースト1。世界で見てもジェンダーギャップはかなり大きいという結果が出ています。さらに、最近ではある著名な政治家による女性を蔑視するような発言があり、世界中のニュースメディアを騒がせることとなりました。
そんな男女格差の問題について、性別に関わらず1人でも多くの人に関心を持ってもらいたい。そんな想いで、今回は男女格差の問題点や原因、日本の現状などについて解説していきたいと思います。
男女格差の問題点や原因
男女格差と一口に言ってもあらゆる問題点がありますが、大抵は女性が弱い立場に置かれており、それによって様々な被害を受けている状態のことを意味します。
男女格差による問題点として、以下が挙げられます。
教育の格差
貧困に喘ぐ途上国においては、かかる学費のことを考えたときに女子よりも男子を優先させる傾向にあります。また治安が悪くて女子を通学させるのは危険だったり、女子トイレがないといった設備的な問題や、習慣・歴史・歴史の関係から児童の強制結婚により幼少期に学校で教育を受けた期間が極端に短いケースも教育格差に繋がる原因として挙げられます。
日本では治安や設備というよりも、慣習的なものが原因となっていることが多いです。例えば、「男は外で働いて、女は家で家事をする」という古くからの概念的なものを保護者が持っていた場合、息子と娘の間に教育や進学の差が生まれるケースが考えられます。
また、「理系の女子はモテない」「男性よりも学歴が低くないと可愛がられない」という刷り込みや、男性ばかりが上の立場に立っていたり活躍する社会を見て育つといったことも少なからず影響してきます。
記憶に新しいのは、日本の某大学による医学部の不正入試。男子学生を増やすために、試験を受けた女子学生の点数を減点するといったあるまじき行為が明るみになりました。このようなことが起きてしまう社会では、女子が学業に励む意味を見いだせなくなる可能性も否定できません。
なお、平成28年の内閣府 男女共同参画局の調べによると、日本では特に大学進学率が男子55.6%に対し女子は48.6%。大学院進学率は男子14.7%に対し女子5.9%と、いずれも上昇傾向にはあるものの、まだまだ開きがあるというのが現状です。
雇用・賃金の格差
男女間での雇用における格差も男女格差の1つです。
「女性はいずれ結婚して辞めていったり、出産・育児休暇により離れる時期がある」などの理由で、男性よりも賃金が低く設定されていたり、昇進させてもらえないという差別がまだまだ起きているのが現状です。また育児休暇を取得し、戻ってきたときには男性社員と差がついていたり、今までの昇進ルートから外されているということもよく耳にします。
女性が男性と平等に昇進できないとなると、管理職を就いている女性の数も自ずと低くなり、機会や賃金に格差が生まれます。また男性ばかりに決定権が集まるという状態では、世界が今重視している多様性とは真逆の方向に進んでしまい、国際社会からどんどん遅れをとってしまうでしょう。
日本では1985年、性別を理由とした雇用における差別を禁止する「男女雇用機会均等法」が制定されました。女性の賃金は時代の経過とともに上昇している傾向はあるものの、以下の図を見るとまだまだ男女間の賃金格差は大きく、他の先進国と比較すると最低の水準となっていることがわかります。
DVなどの暴力被害
男性優位の社会であると刷り込まれて育った人たちの中には、知らず知らずのうちに「女性は男性の言うことを聞くもの」「女性は男性による理不尽なことにも耐えるもの」という感覚を持ってしまうことがあります。
そのような女性差別・蔑視があることで、男性が何かのきっかけで女性に対しDV(家庭内暴力)や性的暴力を起こしてしまうという現実があります。また、弱い立場にある女性が受けた被害に対して声を上げられず、「自分にも責任がある」という考えになってしまう人もいるようです。
これは男女間の体格差もありますが、教育・経済格差も少なからず関係していると言えます。女性の暴力被害をなくしていくには男性の意識を変える必要があり、つまりは国際社会全体における男女不平等の構造を是正していくことが重要となります。
子育て・家事の負担
「子育てや家事は女性がするもの」という考えも、ある種の差別だと言えます。
女性の社会進出が進んでいる今、子どものいる家庭でも夫婦共働きという選択をする人たちはとても多いです。ですが、2人とも仕事をしているのにも関わらず、子育て・家事を全て女性に任せるのはとても負担が大きく、平等とは言えません。
これは夫婦間の賃金格差により、稼いでるほうが優位に立つという慣習も大きく関係していると言えます。「自分のほうが稼いでいないから、そのぶん子育てや家事をやらなくてはいけない」という考えになってしまう女性もいるでしょう。
近年では育児に積極的な男性が「イクメン」と呼ばれて称されることも増えました。しかし、「男性が育児=偉い」という概念がある時点で、まだ子育ては女性がすることという認識が社会の中に強く残っているとも言えます。男女格差問題の解消していくには、そういった意識を社会全体で変えていくことも重要なのです。
ここでのポイント
- 男女間の教育や雇用・賃金の格差は、古くからの慣習や考え、宗教、貧困、治安などから生まれている
- 日本での男女間の大学進学率や賃金の格差は年々縮まってきてはいるものの、依然として男性のほうが高い数字となっている
- 女性のDVなどの暴力被害や子育て・家事の負担は、男女間の賃金格差が少なからず関係していると言える
世界と比較した日本の男女格差の現状
各国の男女格差を経済・政治・教育・医療の4分野から数値化したものを「ジェンダーギャップ指数」と呼び、世界経済フォーラム(World Economic Forum)が毎年発表しています。
残念なことに、2021年3月31日に発表されたジェンダーギャップ指数のランキングによると、日本は156カ国中120位。特に経済が117位、政治が147位と順位を押し下げる形になり、G7(主要7カ国)の中では最下位という結果に各界から落胆の声が多く聞かれました。
なお、ジェンダーギャップ指数ランキング上位の国は以下の通り。
1位 アイスランド
2位 フィンランド
3位 ノルウェー
4位 ニュージーランド
5位 スウェーデン
6位 ナミビア
7位 ルワンダ
8位 リトアニア
9位 アイルランド
10位 スイス
北欧諸国の男女格差が少ないことは想像しやすいと思いますが、意外にもナミビア・ルワンダといったアフリカの国々が上位にランクインしています。
1994年にルワンダで多くの犠牲者を出したジェノサイド(大虐殺)。復興には女性の力が必要となり、ジェンダー平等を明確にした法改正などが行われました。その後、女性の社会進出が加速し、現在では国会議員の半分以上は女性議員が占めています。
こうして見ると、日本はまだまだ男女平等においては後進国であると言えます。日本社会がこれから発展していくためにも、女性への差別・蔑視を排除し、男性と同じ機会や正当な評価を受けられるようなシステムを整備していくことが急務なのではないでしょうか。
参照: Global Gender Gap Report 2021
最後に
国や企業、家庭、宗教などによっても事情は異なるものの、男女格差は解消すべきというのが今の世界の進む方向であるのは明確です。
性別に関わらず、1人ひとりが能力を活かして職場や家庭で活躍できる機会を平等に与えられる社会をつくる。そのためにも、まずは私たちがこの問題について考え、議論をどんどん世に訴えかけていくことが重要です。
1人でも多くの人に関心を持ってもらえるよう、WEELSではジェンダーギャップについて引き続き発信していきたいと思います。
株式会社ハイナス・アンリミテッド代表 兼 WEELS編集長。ライティングやSEO対策を得意とし、日英バイリンガルの英会話トレーナーとしても活動。週末はもっぱらキャンプ。