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子どもたちが自分の意思で通える駄菓子屋「irodori」

子どもの7人に1人が貧困状態にあると言われている日本。相対的貧困と呼ばれ、経済的な困窮により教育や体験といった機会が十分に得られず、格差を生み出す大きな要因となっています。

「そんな子どもたちの拠り所となるような場所をつくりたい」という想いから立ち上がったのが、NPO法人Chance For Allの学生チームが手掛ける駄菓子屋「irodori」。今回は学生チーム代表の飯村俊祐さんから、irodoriを立ち上げに関して様々なお話を伺うことができました。

NPO法人Chance For Allと学生チーム

NPO法人Chance For Allと学生チーム

私たちNPO法人Chance For All(以下CFA)は、2014年から足立区と墨田区に9つの民間の学童保育「CFAKids」を開校。「生まれ育った家庭や環境でその後の人生が左右されない社会の実現」という理念を掲げており、学校にいる時間よりも「放課後のあり方」に着目しています。

保育関係や義務教育などに比べ、明らかに予算が少なく環境が整っていないのが学童保育の現状です。私たちは、そんな中でも子どもたちが健やかに成長でき、可能性を育むために豊富な経験のできる環境を重視しており、そのための最大の学びが「遊ぶこと」だと考えています。

新規事業として駄菓子屋「irodori」プロジェクトを立ち上げ、中心メンバーとして運営・活動しているのが「CFA学生チーム」です。中核の運営メンバーは最近増えて8人、7月にオープンする駄菓子屋の販売・運営ボランティアスタッフも現在10人ほどで、総勢20人弱のチームです。

NPO法人Chance For Allと学生チーム2

私がCFAと関わるきっかけとなったのが、2020年の夏に行われたCFA主催のイベントに参加したことです。4日間ほど学童保育の現場に入って、理論と実践を行き来する内容でした。そこでCFAの理念に大変共感し、その後はボランティアとして継続的に参加させてもらうようになりました。

もともと世界の貧困などに関心があったというのもあり、現在大学では国際政治経済学部を専攻しています。授業で学んでいく中で、海外だけでなく日本にも見えない貧困が大きな問題として存在しているということを知りました。

また、子どもを取り巻く虐待やいじめなど、心の痛むニュースが目に留まることも多く、次第に「苦しんでいる日本の子どもたちの助けになりたい」と思うようになったのも現在の活動を始めた理由の1つです。

子どもが自分の意思で来れる居場所「irodori」

子どもが自分の意思で来れる居場所「irodori」

CFAの民間学童保育の活動の中で課題として挙がっていたのが、子どもたちが自分の意思では通えないということでした。教育への感度が高い家庭とそうでない家庭で、子どもたちが学童保育に通えるかどうかの差が出てしまいます。

そこで差が生まれてしまうのはおかしいのではないか、子どもたちが自分の意思で来られる場所が必要なのではないか。そんな中でどのような場所がよいかを議論していたところ、今回のプロジェクトである駄菓子屋「irodori」のアイデアが出てきました。

irodoriはただ駄菓子を売る場所ではなく、お店の奥にフリースペースを設け、大学生に宿題を教えてもらったり、おしゃべりをしたり、本を読んだりといったことができるような空間となっています。駄菓子屋という気軽に来られる場所で、多様な交流が生まれる仕組みづくりを行っています。

「irodori」という名前の由来

「irodori」という名前の由来

「irodori」の名前の由来は、「子どもたちに自分の色を出して欲しい」「自分のことを好きになって欲しい」という願いを込めています。

全く違う「いろ」と「イロ」を混ぜると新しい「色」が生まれるように、「ひと」と「ヒト」が交流することで生まれるのが「未来に向けた新たな可能性」です。

世代・性別・立場を問わず、子どもたち・地域の人・大学生など、様々なバックグラウンドを持つ人々が交じり合う。一人ひとりが持つ「iro」を大切に、よいところを見つけ合い、価値観・考え方・多様性を認め合い、尊敬し合う関係性を築ける。そんな空間になっていくのがirodoriの理想です。

また、irodoriを通して知っている以外の大人に触れ合うことで将来的な視野が広がり、自分の新たな発見や気付きから幸福感が得られたり、自分がやりたいことや楽しいと思えることを見つけられることで自己肯定感に繋がるのではないかとも考えています。

「irodori」という名前の由来2

ちなみにこれは余談なのですが、irodoriは私の好きなMr.Childrenの「彩り」という曲からも来ています。というのも、歌詞の中にこんなフレーズがあります。

「僕のした単純作業がこの世界を回り回って まだ出会ったこともない人の笑い声を作っていく」

私たちにも、チームを運営していく中での単純作業がたくさんあります。ですが、そんな作業も一つひとつ丁寧に行っていけば、この駄菓子屋に来る子どもたちの笑顔をつくっていくことに繋がると信じています。その想いがこの曲のフレーズと重なったのです。

さらに、ローマ字表記にすると、前から読んでも後ろから読んでも「irodori」になります。先程の歌詞にあったような「回り回って誰かの笑い声を作っている」を表現できる、循環を表現しているのがローマ字表記でした。ローマ字表記にすることで、外国籍ルーツの子どもたちも遊びに来てくれたら嬉しいです。

今後の課題は共感してくれる人に支援してもらう仕組みづくり

今後の課題は共感してくれる人に支援してもらう仕組みづくり

学生チームのメンバーもみんなよくやってくれていて、CFAの先生方やスタッフの方たちにも協力していただいており、本当にありがたいと思っています。

今は私自身のタスクがとても多いのですが、しっかりと丁寧に取り組むことを心がけています。経営・運営のことに関してはまだ不慣れなので、自分の未熟さを常に感じているところです。自分の能力を上げて周りの足を引っ張らないようにし、期待に応えることを楽しんでやっていきたいと思っています。

またこれからはクレームなどの苦労もあるとは思いますが、失敗が成長させてくれると前向きに捉え、根本にある信念は貫きながら活動を続けていくつもりです。

なお、「irodori」の活動を継続・持続していくために、助成金やクラウドファンディング、駄菓子の販売、レンタルスペース、大人向けの体験サービスを提供などを考えています。プロジェクトに共感してくれる人を集め、「支援していただく」「レンタルスペースなどでマネタイズ」の2つを資金調達の軸として考えているところであり、今後の課題でもあります。

いずれにしても、来てくれる子どもたち・共感してくれる人たち・大学生など、全員がwin-winな関係になれるような活動の継続・場所づくりを目指しています。

クラウドファンディングを活用することで認知を広める

クラウドファンディングを活用することで認知を広める

現在の制度や社会では限られた人のみを支援する方法が主流なので、誰もが来られる居場所は少なく、行政や助成金も届きにくいのが現状です。そのため、共感してくれる仲間や期待してくださる方々との出会いを求め、クラウドファンディングに挑戦しました。

子どもたちが自力で来られる場所をつくるため、そしてそれを継続していくにはどうしてもお金は必要です。また理念を広めることを重視しているので、認知を広めるためにも今回はクラウドファンディングを利用しました。

子どもたちが集まれる場所はirodoriが活動する足立区だけではなく、各地域が持つ課題です。クラウドファンディングを通して「このモデルだったら自分たちでもできる」「自分たちの地域にあった、子どもたちが自力で来られる場所ってなんだろう?」ということを考えてもらえたらと思っています。

ちなみに資金調達はファーストゴールの300万円を達成しました。皆様の温かいご支援や応援を次なる力に変えて、次の目標を500万円に設定。子どもたちが安心して暮らせる社会をつくる夢を、一緒に叶える仲間になっていただけたら嬉しいです。

irodoriのクラウドファンディングページ:こども達が自分の意思で通える、第三の居場所として駄菓子屋を作りたい(6/16にて募集終了。支援総額は4,210,000円。)

地域の大人と繋がる「多世代交流」の空間へ

地域の大人と繋がる「多世代交流」の空間へ

まずは大学生と子どもたちとの関係性を築くこと、次のステップとして地域の方との繋がりをコーディネートすることを考えています。例えば、地域の方に駄菓子屋で昔遊びを教えてもらったりなど、中間的な立場として繋ぐことが可能であり、そこでまた新たな「いろ」と「イロ」の関係性が生まれるでしょう。

また、irodoriのモデルもどんどん広げていきたいなと思います。「駄菓子屋」ではなくても、子どもたちが自分の意思で来られるような場所を作る、そういったことを考える若者が増えて欲しいです。各地にこういった場所が増え、放課後の時間が素敵な社会にしていきたいというのが大きな展望です。

直近の2年間の展望としては、「駄菓子屋と多世代交流食堂の兼用」も目指しています。イメージとしては「子ども食堂」ですが、貧困の子ども向けといったイメージにはならないよう気をつけながら、孤食や保護者の負担を減らせる運営ができればと考えています。

加えて、虐待などの発見をするなど、第一段階を「irodori」で、その後の高度なケアは専門的な方に繋いでいくような入口支援の役割も担えたらと思います。

地域の大人と繋がる「多世代交流」の空間へ2

駄菓子という価格の安さを利用して、子どもだけで来られるハードルをできるだけ低くしています。ただ、駄菓子屋と言えどお菓子は基本的に有料です。もちろん駄菓子を買わなくとも、お話をしに来るだけでもいいように声をかけていくつもりです。

それでも、貧困状態にある子ども以外の子どもも来れる場所であることで、格差のようなものを感じてしまう可能性も否定はできません。

これはまだアイデアベースですが、例えば大人の方に「1日店長」のようなサービスを提供し、参加するには寄付金をいただきます。その金額内で何個までお菓子を取り放題にするなど、誰でも無料でいられるといったようなことも叶えられたらと思います。

まだまだ私たちにも色々と課題があります。今後irodoriをよりよい空間にしていくためにも、多くの方々からアドバイスをいただきながら活動を続けていくつもりです。

〈irodoriのSNSアカウントはこちら〉

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