ソーシャルグッドな発信で、SDGsの考えを広めるメディア「WEELS」

空き家を活用したバイト付きシェルターで、家や仕事に困っている人を支援

現在、日本では人口減少や過疎化による空き家問題が深刻化しており、この先も全国の空き家率は進んでいくと見られています。その一方で、何らかの事情により住む場所と仕事を失い、行く場所のない人たちも多く存在しています。

そんな「空き家問題」と「貧困問題」を掛け合わせ、2つの問題を同時に解決に取り組むソーシャルビジネスを手掛けるのがRenovate Japan。今回は代表を務める甲斐 隆之さんから、プロジェクトを始めるきっかけや、運営していく上での工夫、これからの展望など、魅力に溢れるお話を聞くことができました。

Renovate Japan 代表 甲斐 隆之さんプロフィール

埼玉県久喜市出身。働きながらボランティアで国際開発に携わる実務者・研究者・業界を志す学生などを繋ぎ、「志と知の実践」を目指すプラットフォーム(会員500名以上)を運営。2020年10月よりRenovate Japanを起業。

「家や仕事に困っている人」と「空き家」をマッチング

日本では高齢化や管理・解体・改修に掛かる費用などが原因で、空き家問題が深刻化しています。2018年に総務省が行った調査では、空き家は全国で846万戸(全体の約13.6%)。この数は増加傾向にあり、野村総研では全国の戸建ての3分の1が2033年には空き家になると予測しています。

一方で、ホームレスやネットカフェ難民、家庭の事情などの家にまつわる課題を抱えている人々も多くいます。厚生労働省が2019年に行った日中の目視調査によると、ホームレス状態の方の数は全国で4500人以上。日本の相対的貧困層は約6人に1人と言われており、新型コロナウイルスの影響も考えると現在の事態はさらに深刻だと考えられます。

「家が空いている」のに「家が足りていない」というのは社会として矛盾している。

これら2つの問題解決をどうにか解決できないかと模索した結果、家や仕事に困っている人に住み込みで空き家改修の仕事を与え、改修後は賃貸シェアハウスとして運用。改修の過程に家と仕事に困っている人たちをうまく巻き込み、空き家に付加価値をつけて市場展開するというアイデアに行き着きました。

「家や仕事に困っている人」と「空き家」を直接マッチングさせようとなると、どうしても物件の所有者の善意頼みになってしまいます。そこで間にRenovate Japanが入り、空き家改修の仕事をバイトとして提供することで、貧困状態にある人たちの生活支援が可能に。さらに空き家を賃貸シェアハウスとして展開することで、外国人や性的マイノリティ、社会的弱者の受け入れも可能になります。

また改修のお手伝いや差し入れなどの支援を受けることで、地域コミュニティの形成にも繋がると考えています。そのため、登録式のオンラインコミュニティのサポーター制度を設けて、空き家が改修の場であると同時にコミュニティをつくる場としても活用できるよう運営していきます。

家と仕事をセットにした「バイト付きシェルター」

まず、Renovate Japanの運営スタッフが空き家オーナーから借りる、または購入します。家は3人以上で住めるのものを基準としているため、3DK以上の物件を選ぶようにしています。

物件探しは簡単ではありませんが、幸いにも現在リノベーション中の空き家は、行政が運営する空き家バンクで見つけることができました。

建築関連の専門的なサポートをしてくださる方々との繋がりがあり、監修・助言をもとにDIYリノベーションを行なっています。ただし、DIYでの改修が難しい部分については外部への発注も検討します。改修にはおよそ3〜4ヶ月かかり、その期間が短期アルバイト付きシェルターとなります。

改修することによりある程度質の高い居住部屋の準備が可能となり、シフトも入りたいだけ入れるので、無理のないワーク・ライフスタイルを保ちながら生活できる環境を提供できるのがRenovate Japanの強みです。

なお、アルバイトとして改修に携わる人は、連携している他の支援団体が適正を見ながら紹介してもらいます。そのため、今のところ私たちから直接アルバイトを募集する予定はありません。

改修が全て終わったら、Renovate Japanが賃貸シェアハウスとして運営。住み込みアルバイトとして携わった人は、

  1. そのままシェアハウスの家賃を払って住み続ける
  2. 次の空き家に住みながら、もう一度アルバイトとしてリノベーションに携わる
  3. 卒業して自立する

という選択肢から選ぶことになります。またアルバイトとして携わった人に、そのままシェアハウスの管理人になってもらうというのもありかなと思います。

シェアハウスの家賃は、住み込みアルバイトをしているときのものに比べると少し高くはなります。ただし賃料は立地面を考えても非常に格安で、生活保護などのセーフティーネットや就労など、私たちがサポートしながら適切な次のステップが取れていれば問題なく生活できる料金設定にしています。

そのため、Renovate Japanではアルバイトとして雇った方を、ハローワークや就労支援団体に繋ぐなど、次のステップ形勢としてその人の状況に合わせた継続支援も積極的にしていくつもりです。

現在は1人住み込みでDIYに携わっている人がおり、楽しんでやってくれています。3月から始めて6月中旬頃に改修が終わる予定なのですが、一人ひとりを大事にしていきたいので、その方が落ち着くまでは新規受け入れはしないと決めています。

近隣住民への挨拶まわりで気づいたこと

Renovate Japanの事業を始めるにあたり、まずは改修する空き家の周りの近隣住民へ挨拶回りをしました。そのときに住民と話をしていて気付いたのは、身分不詳の人たちが入ってくることに対してはやや抵抗感があるということです。

私たちの場合、例えば3ヶ月の改修期間だけそのような人たちが出入りする可能性がありますが、それ以降は賃貸シェアハウスになるので、固定の人たちが住むようになります。そうなると、住民票を移し、家賃を支払い、仕事または何かしらのセーフティーネットに繋がっているという状況になります。

このように、決して身分不詳の人たちが入ってくるというわけではない、ということを説明することで理解を示してくれています。また、今はコロナ禍で大変な想いをしている人たちが多いという部分でも共感してくれる人が多いです。

加えて、心の余裕が削られている人たちが共同生活をする上で、何かしらのトラブルが起きる可能性も考慮しなければなりません。

特に改修期間は生活支援という役割も担っているので、スタッフは最低でも一人泊まり込みが必要だと考えています。ただし、雇い主と四六時中一緒にいることにもなるので、入居する人たちに合わせて臨機応変に対応していきたいです。

ソーシャルビジネスというスタンスを活かしたクラウドファンディング

シェアハウスの家賃収入から大家さんへ支払う家賃を引いた残りがRenovate Japanの収益となりますが、改修費用などが大きくかかります。そのため、ソーシャルビジネスというスタンスを活かし、クラウドファンディングや助成金を活用していきたいです。

クラウドファンディングでは資金調達だけではなく、認知を広げるといった面でも大きな意味があります。大々的に打ち出すことで外部の方から応援メッセージをいただけたり、SNSで拡散してもらえるのはとてもありがたいです。

嬉しいことに、今回クラウドファンディングに出してからはメディアからのお問い合わせも増えました。このように報道していただいて露出が増えることで、さらなる相乗効果が見込めたらと思います。

またPRとしてFacebook・Instagram・Twitterを週に3回ほど更新しています。改修の過程・今の状況・クラウドファンディング・賃貸化した後の入居者募集などの情報を継続的に発信し、私たちの活動を広く知ってもらえたら幸いです。

Renovate Japanのクラウドファンディングはこちら:【国分寺・シェアハウス】空き家を活用して、家と仕事に困っている方々を支援したい!(目標金額400,000円を大きく上回る、124,9500円の資金調達に成功)

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今後の展望

現在は「家と仕事に困っている人たち」とやや広めの括りですが、物件数を増やしていく中で将来的には対象を絞らないと支援できないような外国人就労者や女性、性的マイノリティといった人たちもターゲットに、差別を助長しない形で支援していきたいと考えています。

また、空き家や仕事と家に困っている人の問題は全国の問題なので、地方でもうまく展開していきたいです。ただ規模や機動力の面で、自社だけで全てやるのは難しいというのが正直なところ。そのため、地域ごとに大学生の組織をつくり、アルバイトとして拠点づくりに巻き込んでいけるのが理想です。

Renovate Japanの賃貸シェアハウスは、多様性を尊重したインクルーシブ(包括的)な空間になっていったらと願っています。誰もが尊重されるセーフスペース(心理的に安全な場所)として、状況や人に合わせた場所を支援という形で提供していくのが私たちの目指すべき姿です。

最後に

今回のインタビューで、SDGsの根底にある「誰一人取り残さない」というテーマについて改めて考えさせられました。

偽善でもなく、自己犠牲でもない支援を継続していくにはどうすればよいか。それはまさしくRenovate Japanのような「支援をビジネスに転換していく仕組み」を構築していくことなのかなと、自分自身にとってもよいヒントになりました。

これからもWEELSではRenovate Japanの活動に注目し、これからの展開を応援していきたいと思います。

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