近年は地方創生という言葉がよく聞かれるようになり、都心部から地方へ移住する人たちが増えています。
内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局が2020年に行った調査によると、東京圏に暮らす20〜59歳のうち、50%近くの人たちが地方暮らしに関心があるとのこと。さらに、年齢が若いほど移住への意向が高い傾向にあるということもわかりました。
特に、2020年の前半から始まったコロナ禍がきっかけで、密にならず低いコストで暮らせる「田舎」への移住に今注目が集まっています。実際に広々とした古民家に住み、広大な自然に囲まれた生活に魅了される若者たちが多くいます。
しかし、「田舎に移住はしたいけれど、仕事が見つかるか不安」「どのように仕事を見つければよいのかわからない」という理由で躊躇(ちゅうちょ)してしまう方も。田舎で生活していく上で、仕事面の不安はクリアしておきたいところですよね?
そこで今回は、田舎で仕事を見つけるおすすめの方法を徹底解説していきたいと思います。
田舎にあるおすすめの仕事
「田舎に行っても仕事なんかないよ」という声がよく聞かれますが、答えはYesでもありNoでもあります。ただし、一つはっきりと言えるのは「仕事が全くないなんていうことはない」ということです。
田舎に仕事があるかどうかは、ある種捉え方によって答えが変わってきます。人によっては「田舎にも仕事はたくさんあるよ」と感じるでしょうし、実際に移住した地で仕事を見つけた人もたくさんいます。
そこで、田舎にはどのような仕事があるのかも含め、おすすめの仕事をいくつかご紹介したいと思います。
地域おこし協力隊
地域おこし協力隊は、過疎化・人口減少の著しい地域の活性化を目指し、その土地のブランド製品やビジネス、サービスなどの開発・販売・PRといった地域協力活動を行います。
2009年に総務省によって制度化されて以降、現在では受け入れている自治体は1,000以上、全国の協力隊員数も5,000人を超えています。
隊員は委嘱職員として各自治体に所属し、任期は1〜3年間。各隊員にはミッションが任されており、その活動への経費として1人あたり440万円/月を上限(給与を含める)とした財源が確保されています。
比較的自由度が高く、自治体によっては役場だけでなく好きな場所で仕事をしてもよいというところも。また、本人が希望すれば委託業務として個人事業契約への切り替え可能なケースもあります。家賃・インターネット・ガソリン代の補助もあるなど、移住生活を仕事とセットですぐに始められる手厚い補助が魅力です。
一方、隊員には自らが中心になって仕事をつくったり、地域の人たちとコミュニケーションをとるといった行動力が求められます。そのため、仕事の依頼が入るまで待っているといった受け身の姿勢ではなく、どんどん積極的に行動する人に向いた仕事だと言えます。
地域おこし協力隊員インタビュー記事:住み続けられるまちづくり。人口2,000人の田舎町を住みたくなる町へ
こちらの記事もチェック:地域おこし協力隊ってどうなの?現役隊員がメリットやデメリットを解説
給付金を利用した新規就農
農林水産省は、49歳以下の独立・自営就農または雇用就農を目指す人を対象に「農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)」を給付する制度を定めています。
給付金は、就農に必要な知識や技術を学ぶ「準備型(最長2年間)」と、農家として独立自営を始めた際の「経営開始型(最長5年間)」の2種類。それぞれ年間で最大150万円の補助を受けることができます。
準備型では、都道府県が認定している研修期間で1年ほど(200時間以上)の研修を受けられます。農業に従事したことのない未経験者でも実用的な技術を習得できるため、将来性のある田舎への移住ができるのがメリットです。
給付金の申請は各自治体に申請をし、面接試験などを行った上で承認が行われます。それぞれの自治体によって申請方法は異なるため、ホームページや電話などでしっかりと確認しておくのがおすすめです。
伝統工芸継承のための見習い研修
日本の各地でつくられているガラス工芸や木工、陶芸などの伝統工芸品の中には、後継者不足により将来的には消えてしまう可能性のあるものも多く存在します。
そんな危機を免れるべく、見習い修行として職人のもとで仕事を手伝いながら研修を受け、最終的には技術を習得してその伝統工芸を継承していくためのプログラムを提供している事業者があります。
給与をもらいながら技術を習得でき、田舎へスムーズに移住できるのが大きなメリット。伝統工芸は希少性が高いため、価値の高いプロダクトをつくれるようになるための大きなチャンスとも言えます。質の高いものをじっくり時間をかけてつくりたいという職人気質の方はぜひチェックしてみてください。
田舎ならではの1次産業
都心部にはないような、田舎ならではの仕事をしたいと考える方も多いでしょう。ただ、田舎ならではと一口に言っても幅広い職種があるため、ぼんやりとしたイメージのままだと仕事探しも難しくなりますよね。
田舎では農業・林業・漁業といった、いわゆる1次産業と呼ばれる仕事が多め。これら3つの大きなカテゴリーを細分化すると、以下のような仕事があることがわかります。
◇農業
・野菜農家
・果物農家
・畜産農家
・花き農家
など
◇林業
・林業事業
・森林組合
・製材業
・木工制作
など
◇漁業
・遠洋漁業
・沖合漁業
・沿岸漁業
・養殖業
など
これらもさらに細分化できるので、種類としてはとてもたくさんあると言えます。1次産業に従事したいと考えている方は、それぞれが具体的にどのような仕事なのかをチェックし、自分に合いそうなものをピックアップするところから始めてみましょう。
今までと同じ職種の仕事がしたい
都心部と田舎では、多い職種に大きな違いがあります。都心部ではオフィスワークが多いのに対し、田舎では農業やその土地で盛んな産業の仕事が多いというのが一番わかりやすい例なのではないでしょうか。
「今までIT職でバリバリ働いていたから、田舎でもIT系の会社に就職したい」と思っても、仕事の数自体が少ないため、かなり狭き門になります。これはオフィスワークに限らず、あらゆる職種で言えることです。
ただし、都心部にあるような仕事が田舎にないわけではありません。山間地域に住んだとしても、車で通える距離にある近隣の市の中で探すという手もあります。当メディア「WEELS」も愛媛県内子町の小田という山に囲まれた地域に拠点を置いていますが、県庁所在地の松山市には車で1時間で行けてしまいます。
また、地方の企業は高いスキルを持った人材が不足しているという面もあるため、都心部で経験を多く積んでいる人が今まで以上に活躍できるチャンスも。「田舎にはこれまでやってきたような仕事はないだろう」と決めつけず、移住したい地にどのような職種の仕事があるかぜひチェックしてみてください。
起業・独立する
田舎へ移住した人たちの中には、起業したりフリーランスとして独立して働いている人たちもたくさんいます。都会での仕事で培ったスキルやノウハウを自分のビジネスに活かし、今までよりも高い収入を得ているというケースもあります。
もし同じくらい高いスキルや能力を持った人がその土地にいない場合、競合が少ないのでビジネスがやりやすいというメリットも。一度「◯◯ならあの人だ」と町中の人たちに認識さえしてもらえれば、ローカル案件が次々に舞い込んでくる可能性も大いにあります。
また、今は「ランサーズ」や「クラウドワークス」といったクラウドソーシングで仕事をとったり、「BASE」や「shopify」などでネット販売が気軽にできるような時代。田舎に住みながら、インターネットを活用して収入を得ることも十分可能です。
ちなみに、本メディア「WEELS」が拠点を置く愛媛県内子町の小田地区にも、フリーランスのビデオグラファーやフォトグラファー、プログラマー、ライターなどが暮らしており、スキルがあれば独立してやっていけるということを体現できている田舎だと言えます。
田舎に移住してから起業した猪原有紀子さんのインタビュー記事:廃棄フルーツから無添加グミ、そして耕作放棄地から観光農園へ。〜自然を通して親子を笑顔に〜
田舎での仕事の見つけ方
田舎にも多くの仕事があるということがわかったところで、ここでは田舎の仕事の見つ方をいくつかご紹介したいと思います。
移住フェア
全国の市町村自治体や移住促進団体が参加し、その地域の魅力や暮らし、仕事などの説明・相談を受けることができる「移住フェア」。移住・交流推進機構が主催しており、コロナ禍が続く現在はZoomを利用したオンライン開催のものが数多く催されています。
また、各地域でも独自の移住セミナーなどが積極的に行われており、参加して話を聞くことで移住後の仕事の相談をしたり、場合によってはその地域で人材を探している企業を紹介してもらえるケースもあります。
このようなイベントは頻繁に行われており、回によっては特定のテーマが決まっているものも。どの地域へ移住したいのかをなかなか決められないという方は、積極的に各地のフェアに参加して情報収集をしてみましょう。
移住コンシェルジュに相談する
移住に積極的な地方では、「移住コンシェルジュ」と呼ばれる移住サポーターがいることもあります。その土地に移住する上で知っておきたいことや、不安に思っていることなどを気軽に相談できるがポイント。移住までのしっかりとしたサポートを無料で行ってくれるところもあります。
移住コンシェルジュはその地域の多くの企業と繋がりを持っていることが多く、相談過程の中で就職先候補としての企業を紹介してもらえる可能性もあります。例えば、愛媛県の「えひめ移住コンシェルジュ」では、20,000件以上の求人情報も扱っています。
また、住まいや自治体の支援制度の紹介をしてくれることもあるなど、幅広いニーズに答えてくれるのが嬉しいポイント。気になる地域がある場合は、そこに移住コンシェルジュがいるかどうかもチェックしてみましょう。
移住者コミュニティ内での紹介
移住者の多い地域であれば、移住者同士が交流したり情報交換をするコミュニティができあがっているところも多いです。そのようなコミュニティに積極的に顔を出しておくことで、インターネットには公開されていないような思いがけない求人を紹介してもらえることもあります。
コミュニティに入り込むには、移住者の中でもキーパーソン的な人にアプローチをするのが近道。そのような人はSNSで発信していることが多いため、TwitterやInstagramなどを活用しながら繋がりたい人にコンタクトを取ってみるのも1つの方法としておすすめです。
田舎では、横の繋がりが強いのが特徴。そのため、集まりに参加しながら新たな関係を築き、信頼を得ていくのがとても大事です。そういったコミュニケーションがしっかりできる人であれば、仕事を紹介してあげたいと思う人もきっと現れるでしょう。
マッチングサイトを活用する
田舎へ移住した先輩や、自治体の担当者に相談できるマッチングサービスを活用し、仕事を探す上での情報収集をするという方法もおすすめです。
ここでは、中でもおすすめのマッチングサイトを5つ厳選してご紹介したいと思います。
SMOUT
https://smout.jp/
登録したプロフィールの内容に応じて、ピッタリの地域の情報やスカウトメールが届きます。興味のある地域があれば、その土地に暮らす人と直接コンタクトを取ったり、実際に会いに行くことができます。
komforta
https://komforta.ai/
移住相談員が全国の自治体と連携を取りながら、各地域の求人を含む様々な情報を掲載。また、各地の移住担当者とZoomを使ってオンライン相談できる窓口も設けられており、気軽に仕事について聞くことができるのも特徴です。
理想に近い田舎暮らしの写真を選択すると、「地域特性」「地域コミュニティ」「住まい」の3つの軸でピッタリの地域を表示してくれる「くらし診断」が特徴。2021年の冬からは、オンライン面談で気軽に相談できるサービスも開始予定です。
flato
https://flato.jp/
日本各地の「ふるさと仲人」と呼ばれる相談員とオンラインで繋がり、仕事や住まいなどの相談ができます。移住した先輩の話を聞けるオンライン座談会なども行われており、移住先選びや仕事探しのヒントを得るのにも大いに役立つサイトです。
LOCAL MATCH(2021年5月サービス開始予定)
https://local.lifull.jp/pre/localmatch/user/
地方のさまざまな求人情報が掲載され、エントリーや企業・自治体からのスカウトによりマッチング。スキルシートやエントリー管理といった便利なシステムも備わる予定で、田舎の仕事探しをする方であれば必ずチェックしておきたいサイトです。
最後に
いかがでしたでしょうか?一般的には「田舎に仕事はない」と言われていますが、少し目線を変えて見るだけでたくさんの仕事が見つかることがお分かりいただけたと思います。
「田舎暮らしには憧れてるけど、仕事が不安で一歩が踏み出せない」と感じる方は、ぜひ今回の記事で紹介した方法を試してみてください。WEELSは、あなたが理想の田舎ライフを送れることを心から応援しております!
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株式会社ハイナス・アンリミテッド代表 兼 WEELS編集長。ライティングやSEO対策を得意とし、日英バイリンガルの英会話トレーナーとしても活動。週末はもっぱらキャンプ。