もので溢れた私たちの生活は、とても便利で、選択する楽しみを与えてくれます。スーパーやコンビニに行けばたくさんの食べ物が並んでいたり、街に出かければたくさんの服が売られていたり。そのような光景は現代では当たり前すぎて、何の疑問にも思わないのが自然でしょう。
しかし、何かを生産するには労働やコスト、資源、エネルギーが必要になり、ゴミ・二酸化炭素排出などが発生します。多くのものが大量生産されている今、それらが日増しに膨大な量になっています。さらに、余ってしまって使われずに廃棄されてしまうものも大量にあるのが現状です。
このようなことが日々繰り返されてきた結果、環境・労働・人権の面であらゆる弊害が起きています。SDGs目標12「つくる責任つかう責任」が掲げられている今だからこそ、一度立ち止まってこの「つくりすぎ問題」を考えることが必要なのではないでしょうか。
本記事では、大量生産による「つくりすぎ」がどのような問題に繋がっているのかを考えていきたいと思います。
つくりすぎによる大量の廃棄
大量生産の問題点の1つは、売れずに残ってしまう量が多く、さらにそのまま廃棄されてしまうことです。ゴミ廃棄が増えれば増えるほど焼却による二酸化炭素排出が増え、地球温暖化に繋がるということは容易に想像できるでしょう。
今ではそのようなものを廃棄しないための、様々な素晴らしい取り組み・サービスなどがあります。しかし、そもそもの問題は「つくりすぎ」であり、量を減らさないことには根本的な解決になるとは言えないでしょう。
日本の衣類の廃棄量は年間100万トン
つくりすぎのわかりやすい例が、アパレル業界の売れ残った衣類の廃棄問題です。
日本国内での衣類の廃棄量は、年間でおよそ100万トンもあると言われています。その中には、売れずに店頭在庫からそのまま廃棄となった衣類も多く含まれています。
NHKのクローズアップ現代(*1)によると、市場で売られる衣服が28億点なのに対して、その約半数が売れ残り。1度も袖を通すことなく、タグが付いた新品の状態で廃棄されていると報道しました。
衣服の廃棄量が多い原因として、アパレル業界特有のトレンド先読みによる生産や、ファストファッションの台頭などが挙げられます。移り変わりの速さから、次々と新しいものを安く大量につくらなければならないという構図自体が、このような廃棄の多さを招いてしまっていると言われています。
*1:NHKクローズアップ現代 – 新品の服を焼却!売れ残り14億点の舞台裏
つくりすぎによる資源の枯渇
何かを生産する過程では、様々な資源が使われます。生産する量が増えれば、その分たくさんの資源が必要になります。
しかし、地球上にある資源は無限にあるものではなく、例えば石油や石炭、天然ガスといった化石燃料には限りがあります。もちろんこの先も新しい油田は見つかるでしょうが、人間がこのままのスピードで天然資源を使用し続ければ、いつか枯渇してしまうという極論が存在するほど使われているのが現状です。
また、生産活動をする上での発電や焼却が増えることにより、CO2排出量も増加します。地球温暖化や気候変動が国際的な問題となっている今、つくる量を減らすことで温室効果ガスの削減に大きく貢献できるのではないでしょうか。
ジーンズ1本の生産に水10,000リットル
アパレル業界の例が続いてしまい恐縮ですが、実はジーンズ1本を生産するのに水がおよそ10,000リットル、1人当たりの飲み水10年分が使われることもあるくらい、染料を洗い落とすのに大量の水が必要です。
もし使われないまま廃棄されているジーンズが大量にあるとしたら、誰も入らない湯船にお湯を入れてそのまま排水するのとほぼ同じ行為だと言えないでしょうか。
地球には水がたくさんあるから、枯渇するなんてことはあり得ないと思っている方もいるかもしれません。確かに地球の大部分は水であり、蒸発して雲になり、雨が降って戻ってくると考えたら、永久になくならないと思うのは自然でしょう。
しかし、実際に私たちが生活の中で使用できる水はほんの1部であり、地球全体の水のたった0.01%ほど。つまり、生活用水を使い過ぎることによる水不足という問題が起き、私たちが普通に暮らせなくなる日が来る可能性も十分に考えられるのです。
労働環境や人権、働きがいの問題
ものを大量につくるということは、多くの労働が必要となります。もちろん機械によって大量生産が可能となったわけですが、とはいえまだまだ多くの人的リソースが必要です。
しかし、生産量が増えれば働く人の労働量も増え、それが度を超えると心身に異常をきたし、働きがいどころか鬱や過労死に至るケースさえあります。また人件費を抑えるために、劣悪な環境の中で労働を強い、安い賃金で労働者を搾取するといった人権に関わる問題も起きています。
過去にユニクロの下請け工場における不当な長時間労働・低賃金が告発されたような、労働者の人権を侵害するような問題はあらゆるところで起きています。そのような不当な扱いをなくしていくのは当然のことですが、これも資本主義における大量生産の闇だとは考えられないでしょうか。
企業の社会的責任を重視したESG投資や、「エシカル消費」といった価値観が広まっている今、企業がこれから生き残っていくためにも、量ではなく質を重視した生産活動がますます重要になってくると言えそうです。
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エシカル消費やミニマリズムで消えつつある大量消費マインド
先にも述べましたが、環境や社会、人権などにおいて公平だと思えるものを選ぶ、「エシカル消費」という言葉が今広がっています。
安いものを短期間使用して廃棄し、頻繁に買い替えるというのが大量消費のスタイルでは、ゴミの廃棄量が増加したり、環境への負荷が大きくなります。価格が安いということは、つまり低賃金で搾取されている可能性のある商品を消費している可能性も大いに考えられます。
一方、環境に優しい生産方法で、質・値段も高く、長く使えるものを選ぶのがエシカル消費。もちろん生産者の謳う内容と実態がしっかり伴っていることが前提ではありますが、少なくともこのような思考は大量消費マインドとかなり異をなすものです。
またミニマリストと呼ばれる人たちが増えており、消費をすることに囚われず、選ぶものが自分の人生にとって本当に必要なのか・価値を与えてくれるものなのかをよく考えて購入する傾向にあります。このような人たちも大量消費とは真逆の趣向があると言えます。
エシカル消費やミニマリズムといった思考を持つ人たちが増えれば増えるほど、大量生産の社会とのズレが生じてきます。もしこのままつくりすぎている状況が変わらなければ、廃棄量ばかり増え、売り上げは下がるという負のループに陥ってしまうのではないでしょうか。
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最後に
本記事では、ミニマリストが善であり、消費が悪であるといったことを言いたいわけでは決してありません。
ただ、すでに世の中はもので溢れており、それでもなお大量生産された上に使用せず廃棄されています。つくりすぎが故に今起きている弊害や、これからの個人の消費スタイルについて、ぜひ読者の方も一緒に考えていただけたら幸いです。
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株式会社ハイナス・アンリミテッド代表 兼 WEELS編集長。ライティングやSEO対策を得意とし、日英バイリンガルの英会話トレーナーとしても活動。週末はもっぱらキャンプ。