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Society5.0とは?SDGsとの関連性や具体例をわかりやすく解説

  • 2021年6月7日
  • 2021年6月7日
  • 社会

テクノロジーの進化によって、私たちの暮らしはとても便利で快適になりました。一方で、現在の日本にはまだまだ多くの問題が存在しており、それらを解決するためのさらなるテクノロジー活用が必要だと言われています。

そんな中、日本では「Society5.0」と呼ばれる社会を目指す動きが始まっています。最新技術を駆使しながらよりよい未来をつくるためのモデルであり、SDGs(持続可能な開発目標)とも関連性の高い取り組みです。

今回は「Society5.0」とはどのようなものなのか、そしてどのように社会が変わっていくのかを考えていきたいと思います。

Society5.0とは

Society5.0とは

Society5.0(ソサエティ5.0)とは、日本政府が2016年に初めて提唱した目指すべき未来の社会モデルです。

2016年1月に閣議決定された「第5期科学技術基本計画」では、Society5.0を「超スマート社会」とし、次のように定義しています。

「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」

内閣府 Society5.0

つまり、最新のテクノロジーを駆使し、人々が快適に生活できるようにすると同時に、社会が抱える問題を解決していくのが、Society5.0で目指す社会だと言えます。

Society5.0以前の社会

Society5.0以前の社会

Society5.0=5番目の新しい社会モデルですが、そこに至るまではどのようなアップデートが行われてきたのでしょうか。人類が辿ってきた歴史と、その社会モデルを見てみましょう。

Society 1.0(狩猟採集社会):人類誕生~
自然との共存。食料を求めて獲物を狩りながら移動。飢えと戦う。

Society 2.0(農耕社会):紀元前13000年~
灌漑(かんがい)技術の開発から、定住し食料を育てながら集団生活を営むことが可能になる。飢えからの脱出。

※灌漑:水路から水を引いて農地に供給すること。

Society 3.0(工業社会):18世紀末~
蒸気機関車の発明などの技術革命により、大量生産を可能とする工業化が加速。
自給自足から市場経済へ。

Society 4.0(情報社会):20世紀後半~現在
コンピューターの発明、それによる情報流通の開始。情報ネットワーク社会。

なぜSociety5.0を目指す必要があるのか

なぜSociety5.0を目指す必要があるのか

Society4.0(情報社会)では、以下のような問題点が浮き彫りになってきました。

  • 知識・情報の共有、連携が不十分
  • 地域の課題や高齢者のニーズに十分に対応できない
  • 必要な情報の探索・分析にはリテラシー(活用能力)を必要とし、負担になる
  • 年齢や障害などによる、労働や行動範囲の制約

情報や知識へのアクセス・活用ができるか否かが、富の分配だけでなく、平均寿命や幸福のレベルにも繋がり、社会として容認できない格差になりつつあります。

このギャップは出生率の低下と高齢化社会の進行で、時間の経過とともに悪化する可能性が指摘されるようになりました。

また経済発展が進むにつれて、解決すべき社会問題はより顕在化・複雑化しています。

  • 富の集中や地域間の不平等
  • 温室効果ガスの排出増加をはじめとする環境問題
  • 食品ロスの増加と飢餓人口の増加
  • 高齢化に伴った社会コストの増大

成長主義の経済成長が限界に達しており、経済発展と社会的課題の解決を両立することが困難な状況になってきた現在の社会システム。持続可能な社会を目指す上で、誰も取り残されずに成長が可能な社会モデルに転換する必要があるのです。

Society5.0によって社会はこうなる

Society5.0によって社会はこうなる

Society5.0は、急速に発展する技術革新、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ロボット、ビックデータなどを産業界だけで活用するのではなく、社会のあらゆる場面で応用することで新たな価値を生み出し、それに基づいて生活していこうという革新的な考えがもとになっています。

先端技術を活用することによって、Society4.0で浮き彫りになった問題点に以下の解決策を提示しています。

  • IoT(モノのインターネット)で全てのモノと人が繋がり、新たな価値を生み出す
  • AI(人工知能)により、必要な時に必要な情報が提供される
  • 技術革新により、地方や高齢者などのさまざまなニーズに対応できる
  • ロボットや自動走行車などの技術で、人の可能性が広がる

この社会モデルを実現するためには、さまざまなアプリケーションを活用し、それぞれの特性に合わせた量・質・タイミングを満たす必要があります。

AIによってロボットや機器を操作・活用することによって、私たち人間はあらゆる不便で困難な作業活動から解放され、人間にしかできない活動を実行できるようになります。

  • 自動運転による快適な移動=障がいのある・なしや、年齢を問わず誰でも安全に移動できる
  • ロボット技術の活用=どこにいても最適な医療が受けられる
  • 農作業の自動化=農業の効率性を高め、最適な生産量をコントロールできる
  • ドローンによる物資移動=少子高齢化・地方の過疎化の課題が克服される

社会の変革(イノベーション)を通じてSociety4.0で顕在化した社会的課題を解決しながら、持続可能な経済発展を続け、一人ひとりが快適に暮らせる社会がSociety5.0の目指す姿です。

Society5.0とSDGsとの関連性

Society5.0とSDGsとの関連性

Society5.0が提唱する「超スマート社会」は、デジタル技術を環境・社会・経済に最適化することで、現代の課題を克服し、人々の幸福を中心に据えることを最重要視しています。

地球温暖化、エネルギー、食糧、大都市への集中、健康と医療など、これまで困難と考えられていた多くの問題は、DX(デジタルトランスフォーメーション)と革新的なイノベーションを駆使することでの解決が期待できます。

つまり、最新テクノロジーと新しいビジネスモデルを掛け合わせ、人々の生活と社会に前向きな変化をもたらし、共有価値の創造を目的とする。このことは、「持続可能で誰ひとり取り残さない」というSDGsの目標に沿うものだと言えます。

なお、経団連はSDGsの達成に向けて「Society5.0 for SDGs」をスローガンとしており、東京大学とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が共同研究を行った報告書の中でこう提言しています。

「デジタル革新(DX)の進展、地球環境問題の危機感の高まり、経済社会構造の変化、人々のマインドセットの変化など大変革の時代に直面している。 こうした大きな変化をチャンスと捉え、中長期的な経済成長と、持続可能で人間中心の社会の構築を図るには、 日本の国家戦略である「Society 5.0 for SDGs」の実現が大きな鍵を握る。」

引用元:ESG投資の進化、Society 5.0の実現、そしてSDGsの達成へ

Sciety5.0の具体例

人々が幸せにそして安心して暮らせる社会の創造に向けて進むことは、問題に取り組む企業にとってチャレンジングな課題であると同時に、大きなビジネスチャンスでもあります。

どのようなものがSociety5.0を目指す社会に貢献するのか、企業の取り組み事例を少しだけ見ていきましょう。

パートナーロボットによる介護支援(SDGs目標3:すべての人に健康と福祉を)

パートナーロボットによる介護支援(SDGs目標3:すべての人に健康と福祉を)

ユニロボットが開発しているパートナーロボット「unibo(ユニボ)」は、精度の高い音声認識と、AIによる学習機能でユーザーの性格や感情に合わせながら「雑談」をすることが可能です。

加えて生活支援のアプリケーションを追加することで、単身で暮らす高齢者の生活のパートナーとしての活用が期待されています。

  • 深みのある会話を通して認知症の防止の手助けをする
  • スマホアプリ「Unibo-With」と連携して家族とのビデオ通話、写真やカレンダーの共有
  • ヘルスケアに特化したアプリケーション(服薬支援skillpack)で体重、血圧、体温データを集積

また、「unibo(ユニボ)」は高齢者施設向けの開発、現場での運用も進んでいます。

レクリエーション(歌・体操・クイズなど)を職員に代わって行ったり、介護記録システムと連携して利用者の家族への介護状況の説明や職員の交代時の申送り事項の共有行ったりすることで、介護者のコスト・時間の面での負担を軽減することが可能となります。

ユニボ高齢者向け機能の紹介

農業用ドローン(SDGs目標2:飢餓をゼロに)

農業用ドローン(SDGs目標2:飢餓をゼロに)

ナイルワークスは、世界初のセンチメートル精度でドローンを完全自動飛行する技術開発に成功。この技術を搭載した農業用ドローンを作物上空30cm-50cmで飛行させるだけで、薬物散布と生育診断を同時に実行することが可能です。

完全自動飛行で、特別な操縦スキルは不要。農薬散布の作業の軽減を図れるのに加えて、毎回同じ精度で散布作業が可能になり、薬剤の飛散量を大幅に抑えることでコスト減も期待できます。

また搭載した生育調査用カメラで、作物の生育状態を1株ごとにリアルタイムで診断。その診断結果に応じた最適量の農薬・肥料を散布する新しい精密農業の実用化に取り組んでいます。

最新技術を搭載したドローンを新しい農業の「頼もしい助っ人」として活用することで、農作業にかかるコスト・時間の削減を図るとともに、農作物の収穫量と品質を向上させることを目指しています。

ナイルワークス ホームページ

この他にも経団連の専用サイトでは、Society 5.0 for SDGsに向けたイノベーションの取り組みが随時紹介されています。

Keidanren SDGs

最後に

人口減少・少子高齢化の進む日本の未来にとって、必須と言っても過言ではないテクノロジー活用。これからもさらなる進化を続けていくと思われるテクノロジーは、様々な形で私たちの暮らしを助けてくれるものとなるでしょう。

もちろん「AIロボットに人間の仕事を奪われる」という考えもありますが、AIロボットのおかげで「人間にしかできないこと」に時間を割くことができると考えると、より明るい未来を描ける気がしませんか?

WEELSではSDGs達成のためのテクノロジー活用について、これからも発信を続けていきたいと思います。

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