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子育てに自然の力を!子どもが自然と関わって遊ぶ効果とメリットをご紹介

「子どもにはもっと自然の中で遊んで欲しい!」

「自然体験は子どものためになりそうだけど、どんなメリットがある?」

「子どもをもっと自然の中へ連れ出した方が良い?自然体験は必要なの?」

日常生活で何かと制約が多くなってしまう中、子どもには自然と触れ合いながら、思いっきり好きなように遊ばせてあげたいと願う保護者の方も多いのではないでしょうか?

社会の中でも、子どもが主体的にいろいろな遊びを直接体験することの大切さが見直されています。

子どもが未来を切り開いていく力を育むために、直接自然に関わって遊ぶ価値が再認識されているのです。

この記事では子どもの自然体験の意義を整理して、今すぐ気軽に始められるお勧めの習慣や活動をご紹介していきます。

子どもは自然と関わりながら育つ

人間は生まれた直後から、五感を通して自分を取り囲む自然を感じながら、周囲の環境がどんなところかを理解していきます。

現代では、生まれたばかりの赤ちゃんは、誕生直後から室内で大切に守られて過ごすのが普通です。

しかし室内に居ながらも、窓から入る日差しの明るさ温かさ風の感触匂いを感じ、鳥や虫の声を無意識に体験しています。

離乳食が始まると、味付けしないお米や野菜など自然素材そのものの味を通して「食べる」経験を積んでいくのです。

子どもが歩けるようになり外に出ると、歩きやすい平らな道だけでなく、未舗装のでこぼこ道やゆるやかな坂道を歩くことで体幹やバランス感覚が鍛えられます。

また、綺麗な木漏れ日や花、魅力的な虫、変化する空など、初めて見るものに関心をよせ驚いたり感動したりする中で情緒を育めるのです。

野外にある自然に接することで、乳児期の子どもが身体的・内面的に成長するために必要とする程よい刺激にさらに多く触れられます。

私たち人間が、エネルギーを自在に操って便利な生活の恩恵を受けるようになってから、たかだか100年ほどです。

一方、自然からの恵みと厳しさを直接受けながら人が生きてきた歴史は1万年以上と考えられます。

子どもが自然からさまざまな刺激を受け、自然と関わりながら育っていくという成長の形は、DNA に刻まれているといっても過言ではないでしょう。

子どもの自然体験の効果とメリット

子どもにとって自然の中で遊ぶことは大切であり必要だというのは、子育て中の親や保育現場の保育士には感覚的に理解されてきました。

近年になって、子どもの自然体験に関する意義を科学的に評価しようとする調査が実施されています。

調査結果から、自然体験をふくめた直接体験や自主的な遊びの重要性が明らかになっており、それらを踏まえて国の教育要領や保育指針が改定されました。

ここでは、いくつかの調査結果の概要と子どもが自然の中で遊ぶ意義や効果について解説していきます。

自然体験は非認知能力をはぐくむ

子どもの頃に自然の中で遊ぶことで、「非認知能力」を育むことが期待できます。

テストの点数などで評価される「認知能力」に対して、「非認知能力」とは物事に取り組む姿勢や考え方など、数値化できない内面的な能力のことです。

非認知能力として、具体的には次のようなものがあげられます。

  • 意欲
  • 協調性
  • 粘り強さ
  • 忍耐力
  • 計画性
  • 自制心
  • 創造性
  • コミュニケーション能力

非認知能力は、ノーベル経済学賞受賞者ジェームズ・ヘックマン教授が幼児期の教育が及ぼす影響について、ペリー就学前計画にて明らかにしたのがきっかけで注目されました。

将来的な経済力や生活の質の向上につながるのは、認知能力ではなく非認知能力であり、幼児期に非認知能力を育てることが経済学の立場からも重要という内容です。

非認知能力は、子どもが好きなことを興味のままに遊ぶ中で育まれます

子どもが思い付きのまま「こうしてみよう」「これを使おう」と試行錯誤し、あれこれ想像しながら子ども自身が考えて行動することが重要なのです。

自分の意欲に基づいた遊びであれば、多少の難しさがあっても最後までやりぬけるでしょう。

同じ遊びに共感できる友達や身近な人と関わりながら、遊びを発展させていくこともポイントです。

自然の中には想像力を刺激するさまざまな材料が豊富にあり、市販の玩具のように決まった使い方はありません

自分で創意工夫しながら面白くでき、順番待ちしなくても思う存分楽しめるのです。

自然の中にある遊びの種は、子ども達の感性を刺激して想像力や発想力を高めてくれます。

高い所に登ったり飛び降りたりしてスリルを楽しんだ結果、痛い目にあうこともあるかもしれません。

憧れの生きものを手に入れたくても、簡単には出会えなかったり上手く採れなかったりするものです。

怪我や失敗も、自分の能力を見極め何が危険かを知り、どう工夫すべきか判断するためには貴重な体験となります。

友達のやり方を観察することや、協力して試行錯誤することで壁を乗り越えられれば、大きな達成感を得られるでしょう。

スウェーデン農業大学が環境の異なる2つの保育園を比較した調査も、自然の中での遊びが子どもの育ちに影響していることを示しています。

調査結果では、自然に近い環境で遊ぶ子どもの方が室内で遊んでいる子どもより集中力が高く、発展的な遊びをしており、より健康であるということが明らかにされました。(注1)

このように、自然の中で遊ぶことは身体能力だけでなく非認知能力を高めることが期待できます

同時に、自然と直接関わり五感を通して得た情報が経験として子どもの中に蓄積され、更なる判断力・思考力の土台となっていくのです。

(注1)「幼児のための環境教育」参照。スウェーデン農業大学の出版社から1997年に出版された報告書についての記述より。

自然体験は自己肯定感を高める

子どもの自然体験の価値は、文部科学省が発表した「令和2年度青少年の体験活動に関する調査研究結果報告」にも裏付けられています。

調査結果では、小学生の頃に体験活動(自然体験・社会体験・文化体験など)が多い子どもは、高校生の時点で自尊心・外向性・精神的な回復力が高い傾向がみられたとのことです。

社会経済的背景の差によらず、自然体験が多い子どもほど、自己肯定感が高く自立的行動習慣が身についている傾向があることも明らかになっています。

自尊心・外向性・精神的な回復力や自己肯定感は、非認知能力である意欲・粘り強さ・忍耐性・コミュニケーション能力などを土台として現れるものです。

自然体験が子どもの非認知能力を育んだ結果と受け取ることもでき、子どもが自尊心をもって未来を切り開いていくためにも自然体験が有効に働いていることが伺えます。

幼稚園・保育所でも自然との関わりが重視されている

幼稚園教育要領・保育所保育指針には、次のことが「幼児期の終わりまでに育って欲しい姿」として掲げられています。

自然との関わり・生命尊重 自然に触れて感動する体験を通して、自然の変化などを感じ取り、好奇心や探究心をもって考え言葉などで表現しながら、身近な 事象への関心が高まるとともに、自然への愛情や畏敬の念をもつよ うになる。また、身近な動植物に心を動かされる中で、生命の不思議さや尊さに気付き、身近な動植物への接し方を考え、命あるものとしていたわり、大切にする気持ちをもって関わるようになる。

子どもは身近な自然の美しさ・不思議さに触れて感動する体験を通して、自然の変化などを感じ取り関心をもつようになります。

子どもが身近な自然を遊びに取り入れたり、興味をもって見続けたりすることで、新しい気づきや関心の高まり自然への愛情や畏敬の念につながっていくのです。

幼児期に自然の中で直接体験することは、その後の人生で自然のものや現象について理解していく基盤となります。

また、実体験として生命の大切さを知ることは、生命あるものを大切にし生きることの素晴らしさについて考える姿勢を育むことにもなるでしょう。 

国内の教育・保育に関わる行政や専門家も、幼児期に子どもが自然と関わる重要性を認識しており、子育ての現場で共有すべき方針として明記しているのです。

今すぐ子どもと一緒に始められる自然体験

お金をかけたり遠くへ出かけたりしなくても、今すぐ始められる自然体験はたくさんあります。

自然体験というと何か特別なことをするイメージをもたれるかもしれません。しかし家の中にいても、日の長さの変化を感じて季節の変化に気づいたり食材を調理して土とのつながりを想像したりすることは可能です。

また、街の中にも街路樹や庭の植栽などの緑があり、移動能力の高い鳥や昆虫などの生態を身近なところで見られます。

まずは家の中から、そしておさんぽ程度の行動範囲で、いつもの行動を少しだけ意識的に変えてみることをお勧めします。

毎日の暮らしの中でできる自然体験

まず、家にいてもできる自然体験を探してみましょう。自然のものに興味がなければ、野外に出るモチベーションも高まりません。

大人の意識を変えてみると、生活の中にも自然を感じる機会がたくさんあります。

<キッチン>

トウモロコシの皮むき・枝豆の鞘取り・切り落とした根菜の葉を捨てずに育ててみる

<リビング>

鳥や虫の声に気づく・生きものを飼ってみる

<庭・ベランダ>

小さな生きものを見つける・花の匂いに気づく・野菜を育てる・花や実をつける草木を植えて生きものを呼ぶ

ちょっとしたことがきっかけで、子どもの興味はどんどん広がっていきます。子どもの探求心は果てしなく、大人の都合で無理なことももちろんあるでしょう。

子どもの気持ちと折り合いをつけながら、大人も無理することなく寄り添ってあげられるのが長続きのコツです。

一歩外に出て近所でできる自然体験

おさんぽで行ける範囲でも、意識して見ると四季折々の生きもの達の興味深い行動や自然現象であふれています。

市街地であっても野鳥の子育てを目にでき、同じ親子として親近感を感じるかもしれません。

<空>

変化する雲・月・虹を見る

<道端>

植栽の花や実を見つける・虫や野鳥の行動を観察してみる・虫や野鳥の巣に気づく

<公園や社寺の草地・樹林>

虫を探して捕まえる・草花や木の実を集める

子どもは新しい発見をして誇らしい気持ちを味わえば、また次の面白いものを見つけようと意欲的になっていきます。

子どもなりに経験をいかして、いろいろと提案してくるようになるでしょう。

子どもの提案をもとに次は一緒にどこを探検しようかと相談すれば、親子の時間をさらに充実したものにできそうです。

非日常で楽しむ自然体験

時には、お金と時間をかけて特別な場所で非日常のことができれば、子どもにとって忘れられない体験となるでしょう。

子どもが特にこだわっていたり興味をもっていたりする対象が自然の中にあるでしょうか。

例えば次のようなものです。

  • カブトムシを捕りたい
  • 秘密基地を作りたい
  • 野菜を収穫したい
  • 天の川を見たい
  • 魚釣りしたい
  • 海で泳ぎたい

子どもはメディアの情報や大人どうしの会話を通して、直接経験していない事柄にも興味を広げることがあります。

子どもが関心を寄せていることをテーマに、特別な体験を企画してみてはいかがでしょうか。

その土地ならではの環境や季節限定の自然を体験できる魅力的なツアーを探してみるのもお勧めです。次のキーワードで検索してみてください。

ただし、相手は自然なので全て人間の思い通りにはなりません。

目的を達成できないリスクがあることも理解して、前向きに捉えられたら良いですね。

自然体験に必要な大人の心構え

少しだけ大人の意識を変えれば、日常生活の中でも子ども達が身近な自然と関わることが可能です。

その時、大人が気をつけたいことは、共感・見守り・安全の3点です。

まず、子どもは共感してくれる相手を求めています。

何か面白いことを発見した時に、同じように驚き感動してくれる人が必要なのです。

子どもが「見て見て!」と言った時、大人は意識的にぐっと心を子どもに近づけて一緒に面白がりましょう。

虫が怖い大人も諦めず子どもの視線に合わせることで、自分の価値観が変わる可能性もあります。

また、子どもが興味のままに行動するのを見守る姿勢が大切です。

経験上いろいろと先を見越してしまう大人にとっては忍耐力が求められますが、怖い・汚い・要らないといった先入観を捨て子どもの興味を尊重しましょう。

また、大人の期待が先行して子どもが気乗りしないことまで無理強いするのは、嫌な思い出を残してしまうので禁物です。

何よりも安全の確保は最重要といえます。

高い所からの落下や水の事故につながるリスクはゼロにしなければなりません。

夏の暑さ・冬の寒さから身を守るために、時間や場所を選ぶことや装備などで対策することも必要です。

また、蜂や毛虫など害を及ぼす可能性のある生きものとは、正しい距離を取ることを冷静に伝える必要があります。

以上3つのことに注意しながら、子どもと一緒に自然の中での体験を楽しめれば、子どもはますます自然の中での遊びや自然そのものを好きになるでしょう。

まとめ

自然と直接関わる体験は、子どもが明るい未来を切り開く力を身につけるために有効です。

自然の中には、どんな子も受け入れる懐の深さがあります。

広い空間で時間を忘れ、身体も心も開放して好きなように遊ぶことで、生きていく上で必要な能力を無理なく身につけることが可能です。

いつもは日々の雑事に追われている大人も、自然の中では子どものペースに合わせて歩き、子どもの新鮮な感性に寄り添えるのではないでしょうか。

自然体験の恩恵を受けるのは子どもだけではなく、一緒にいる大人にもストレス緩和などのメリットがあります。

米国の環境心理学者レイチェル・カプランは、人間が自然の中にいると数分の内に筋肉の緊張や血圧が正常値に戻り、ストレス状態から回復する事実を科学的に証明しています(注2)。

ぜひ、身近なところから意識的に自然と触れ合う機会を作って、子育ての中に自然の力を取り入れてみてください。

子どもの目線と柔軟な心に寄り添って、発見や感動を分かち合い一緒に楽しんでみましょう。

そして、私たち人間も自然とつながって生かされていることを実感できれば、地球環境のことをもっと大切に考えられるかもしれません。

子ども達と地球の未来のために、可能なところから自然体験を取り入れることをお勧めします。

(注2)「幼児のための環境教育」参照。「Rachel Kaplan : ‘The Experience of Nature, A Psychological Perspective’」の内容についての記述より。

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