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日本の地球温暖化への対策を知ろう!現状や取り組みを解説

国際的な環境問題の1つである地球温暖化。現在、世界各国が二酸化炭素・温室効果ガスの排出量を削減すべく、あらゆる取り組みを行っています。

そこで今回は、私たちが暮らす日本の地球温暖化への対策について取り上げます。現状や取り組みなどを混じえて解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

気温変化から見た日本の地球温暖化の現状

日本の1年の平均気温は、世界と同じく変動しながら100年あたり1.19℃の割合で上昇してきています。また真夏日(最高気温が30℃以上)や猛暑日(最高気温が35℃以上)の日数も増え、1931年〜2016年の間では、10年あたり0.2日の割合で増加しています。

参照:気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018~日本の気候変動とその影響~

さらに、1日の降水量が100mm以上の大雨の日数が増加傾向にあり、1時間の降水量が50mm以上の滝のように降る雨の発生回数も増えています。しかし、1日の降水量が1.0mm以上の日は減少傾向にあり、降水日数は少なくなってきています。

これらのような気候変動により農業・水産業・林業などに影響が出ています。

気候変動による農業への影響

気候変動による農業への影響

米は高温などにより白未熟粒(デンプンが十分に詰まらないために白く濁る)や胴割粒(亀裂が入る)が発生し、品質の低下が全国で確認されています。また、一部地域や極端な高温を記録した年は収量の減少もみられます。

ぶどう・りんご・柿・温州みかんなどの果実は、高温・小雨による日焼け果の発生や着色不良といった影響があります。特に桃は「水浸状果肉褐変症」という果肉障害等が西日本を中心に発生。外見からはわからないので区別がつかず、品質の不安定化などが考えられます。

気候変動による水産業への影響

気候変動による水産業への影響

気候変動により海水温が上昇し、水産生物の卵を生みつける場所やエサ場など、回遊経路が変化することが心配されています。

2013年にはアラメ・カジメ場の大きな衰退がみられました。九州北部〜山口県までの約200kmの海岸沿いで水温の高さが原因と考えられています。藻場や干潟などの水の深さが浅い場所では分布域や構成種の減少が考えられ、産業にも影響がある可能性も懸念されています。

気候変動による林業への影響

気候変動による林業への影響

海面上昇・集中豪雨が多くなることで地盤が緩み、土砂崩れなどの山地災害が増え、森林や海岸林を失うことが考えられます。

また、日本の代表的な落葉広葉樹の「ブナ」が気温上昇により減少しています。すでに九州・四国・本州の太平洋側ではほぼ消滅し、ブナが育つのに適している環境の東北地方でも今後少なくなっていくのではないかと言われています。気温が2.9℃上がるとブナに適した地域が37%に減り、4.9℃上がると9%までにも減ると予測されています。

さらに、「マツノマダラカミキリ」のような、アカマツやクロマツなどを枯らす病原を媒介する病害虫が、気温上昇によって活動範囲を広げ、枯損被害が大きくなる可能性もあります。

日本の温室効果ガス排出量

日本の温室効果ガスの総排出量は、2019年の速報値で12億1,300万トン。総排出量は6年連続で減少しています。

排出量が減少したのは電力の低炭素化をしたことでCO2排出量が減ったことや、省エネなどによるエネルギー消費量が少なくなったためです。しかし、2013年の排出量が2009年から上がり続けていたので、2009年の排出量と比べると大きく減少したとは言いきれません。

参照:2019年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(速報値)<概要>

総排出量が減少傾向にあっても、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)の排出量は年々増加しています。オゾン層を破壊するフロンは1995年末に生産全廃され、急速に入れ替わっています。ハイドロフルオロカーボンは、代替フロンと言われ、オゾン層を破壊しないという意味で「環境配慮型」と言われてきました。

しかし、強力な温室効果ガスの性質があることから、2017年にモントリオール議定書で規制対象に追加。段階的に減らすスケジュールが合意され、対象物質の生産や消費を段階的に減らしながら廃絶を目指しています。

また、貿易規制・輸入量などに関する定期的な報告が義務付けられています。ハイドロフルオロカーボン類は、冷蔵庫やエアコンの冷媒・発泡剤などにも使用されています。

私たち個人にもできることは、ハイドロフルオロカーボン類の入ったスプレーを購入しないことや、家電製品を廃棄したいときには適正な処理をする業者に依頼する、などが挙げられます。

日本の地球温暖化対策への取り組み

日本が行なっている地球温暖化対策はどのようなものがあるのでしょう。削減目標と、それぞれ部門別における対策や取り組みを一部ご紹介します。

日本の温室効果ガス排出量の削減目標

量の削減目標

日本は温室効果ガスの排出量目標を達成するため、パリ協定の翌年に「地球温暖化対策計画」を策定。中期目標として、2013年と比べ26%を削減することを明らかにしました。2019年には長期目標として、温室効果ガスの排出量を80%を削減すると発表しています。

地球温暖化対策として温室効果ガスの排出量を抑制をする「緩和」も重要ですが、抑制しても温暖化の影響を受ける場合は「適応」していくことも重要です。

そこで2018年には、気候変動適応法で温室効果ガス削減に向けた「緩和策」、気候変動によって起きる自然災害・熱中症・農作物への影響などが無いようにする、または起きても少ない影響で留められるようにする「適応策」の法整備が行われました。

2020年、「2050年カーボンニュートラル」「脱炭素社会」を目指すことを宣言し、2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにすると表明しています。

2021年4月に菅首相が地球温暖化対策推進本部で
、2030年までに二酸化炭素の排出量を2013年と比べて46%減らすと新しい目標を掲げ、50%削減を目指すとも補足をしています。これはパリ協定後の削減目標26%から大幅に目標を引き上げました。「地球温暖化対策推進法(温対法)」の一部を改正する法案も成立され、カーボンニュートラルに向け2021年6月に公布・施行されています。

部門別に細分化した地球温暖化対策

各事業者が二酸化炭素の排出量を減らす対策をするためには、自分たちが直接・間接的に排出量を把握することが前提。日本では現在、PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを基盤として行政に報告し、行政機関により公表されています。

ここでは、それぞれの部門でどのような対策をしているのかを一部ご紹介します。

産業部門(製造事業者など)

産業部門(製造事業者など)

産業部門は、2019年度の二酸化炭素の排出量は日本の温室効果ガス排出量の34.9%を占めています。

カーボンニュートラルに向けた計画の実施として、自主行動計画等を策定していない業種に働きかけや、BAT(1)・優良事例(Best practice)などの省エネ性能が高い機器を取り入れることを促進、IOT(2)を利用したエネルギーマネジメントシステム(Factory Energy Management System:FEMS)などが具体的な取り組みとして今後進められます。

その中でも注目されているのは下記のシステムです。

  • BEMS(ベムス:Building Energy Management System)オフィス・商業ビルの管理システム
  • FEMS(フェムス: Factory Energy Management System)工場のエネルギー管理システム

特にIOTは、「みえる」「繋がる」「最適化」を実現できる、脱炭素社会には欠かせない管理システムです。


*1 BAT(Best Available Technology)は経済的に利用することができる、最も良い技術。

*2 IOT(Internet of Things)は家電や自動車などのモノをインターネットに繋げて便利に活用すること。

建築物の取り組み

新しく作る建築物には、省エネ基準の適合義務化を推進しています。既存の建築物にも省エネに改修するなどの対策がされていますが、ゼブ(ZEB:Net Zero Energy Building)も注目されています。ゼブとは快適に過ごせる空間を維持しつつ、建物で使用するエネルギーをゼロにするように目指している建築物のことを言います。

参照:環境省 ZEB PORTAL[ゼブ・ポータル]

ゼブは、2020年までの時点では新築の公共建築物などに取り入れられてましたが、2030年までには公共建築物以外の新築建築物でもゼブの普及・拡大を目指しています。

このように新しい建物は省エネ基準が設けられて推進されていく中で、既存の建物に省エネ改修を行なっていくことも重要だと言えます。

生活部門の取り組み

生活部門の取り組み

新築の家は省エネ基準の適応義務化が進んでいますが、ネット・ゼロ・エネルギー・ ハウス(ZEH3)・ライフサイクルカーボンマイナス住宅(LCCM4)・低炭素認定住宅(*5)など、温室効果ガスの排出が少ない住宅作りも推進されています。

また、既存の家でも省エネ改修が重要と考えられています。断熱性能が高い断熱材や複層ガラスを利用することや、自然光を利用した採光・太陽光発電の推進により、省エネ改修を行った住宅などに減税措置がされたり、省エネ性能が資産価値に反映されることを目指しています。

他にも、以下のような私たちの生活の中でできる対策があります。

  • 省エネ家電・調理器を使用
  • 節水型の蛇口・トイレ・シャワーヘッドの使用
  • 簡易包装の推進
  • 使用済商品の回収、部品のリサイクル
  • LEDなどのエネルギー消費量を抑えられる照明

また、2030年までに住宅のエネルギー管理システム(HEMSヘムス:Home Energy Management System)の普及も目指しています。HEMSとは、住宅のエネルギー状況を表示し、空調・照明などが最適な運転状況になるよう促すものです。導入されることで、電気使用量を今までよりも細かく計測可能。効率的なエネルギー管理ができるようになります。

*3 ZEH(ゼッチ:Zero Energy House)とは、居住中、自然から採取する1次エネルギーの消費量を±0になる住宅

*4 LCCM(Life Cycle Carbon Minus)とは、ライフサイクルを通じて建築時〜撤去時の二酸化炭素の排出量を含めて二酸化炭素の排出量をマイナスにする住宅

*5 低炭素認定住宅とは、二酸化炭素の排出量を抑える対策がされている住宅で、都道府県または市(区)から低炭素住宅と認定をされた住宅

参照:環境省 温室効果ガス排出抑制等指針

運輸部門の取り組み

2019年度の運輸部門(自動車・船舶など)の二酸化炭素の排出量は2億600万トンで、全体の18.6%。その中で旅客自動車(自家用も含む)が49.3%、貨物自動車が36.8%と大部分を占めていますが、2001年から減少傾向にあります。

参照:国土交通省 運輸部門における二酸化炭素排出量

日本ではトラック・バス・タクシーなどのような事業者などを対象にした「エコドライブ管理システム(EMS:Eco-d rive Management System)」の普及を目指しています。また、エネルギーの効率が良い次世代自動車と言われる下記の車種の普及率を、2030年までに新車販売の中で50〜70%になるよう補助制度などの支援措置を行っています。

  • ハイブリッド自動車(HV)
  • 電気自動車(EV)
  • プラグインハイブリッド自動車(PHV)
  • 燃料電池自動車(FCV)
  • クリーンディーゼル自動車(CDV)
  • 圧縮天然ガス自動車(CNGV)

バイオ燃料の導入・供給を目指し、温室効果ガスの削減や安定した供給ができるよう体制の整備も進めています。

また、宅配ボックスの普及も取り組みの1つ。

ネットショッピングなどが発展し、宅急便の取り扱い個数が急激に増えた一方、再配達の件数も増加。約2割が再配達と言われており、再配達が増えることで二酸化炭素排出量が増えたり、ドライバー不足といった問題も出てきます。

宅配ボックスが整備され、駅・コンビニなどでも受取れるようになる。これによって無駄な再配達を減らし、結果的に二酸化炭素排出の削減が期待できると言えます。

エネルギー転換部門の取り組み

エネルギー転換部門とは、輸入や生産したエネルギーを使いやすく転換する工程で、事業用発電(発電所)・地域熱供給・石油製品製造などが含まれます。

排出量が多かった2013年度と2019年度を比べると、1億3,240万トン減少。発電の効率が良くなったり、省エネなどが進み発電量が減ったことが要因です。

しかし、火力発電の燃料構成の割合は増加しています。

そこで省エネ法に基づき、発電の事業者には、新設・既設設備ごとに、エネルギーミックスで想定できる発電実績の効率基準を満たすよう求められています。また、火力発電所に対して最新発電技術の導入も促進しています。

発電所などから排出された二酸化炭素を集め、地中に貯留・圧入する取り組みである「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)」。2060年までの二酸化炭素を減量する総量のうち、14%はCCSで削減することが期待されています。

参照:資源エネルギー庁 知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」

日本でも北海道の苫小牧でCCSの実験をしていて、30万トンの二酸化炭素を2016年〜2019年に海底下約1,000mの地層や約2,400mの地層に圧入。貯留地点の周辺地域での微小振動観測や、海洋環境調査などの圧入した二酸化炭素の移動や広がりなどのモニタリングを続けていくと発表しています。

J-クレジット制度への取り組み

「J-クレジット制度」という、省エネ機器・再生可能エネルギーを導入したり、適切な森林管理などの取り組みによって、温室効果ガス排出の減少量や吸収量をクレジットとして国が認める制度があります。この制度で発生したクレジットは、カーボン・オフセットなどの様々な用途に使用できます。

創出者・購入者ともに環境に貢献している企業としてPR効果が得られ、企業イメージの向上へ繋がることが期待できます。創出者側はランニングコストを減らしたり、クリーンエネルギーの導入や投資に活用できます。登録プロジェクトは2021年8月現在で863件、認証量は706万tになっています。

参照:J-ククレジット制度

その他にも、低炭素型の都市・地域の構造や交通網の再構築を行うことで、都市のコンパクト化や、温室効果ガスを吸収する緑地の保全・創出を進めています。

水素社会に向けての取り組み

素社会に向けての取り組み

未来の二次エネルギーとして注目されているのが「水素」です。水素は利便性が高く、エネルギー効率も高い上、利用時に温室効果ガスが排出されることもありません。また、再生可能エネルギーなど、様々なエネルギーから生産できるのもメリットです。

「水素社会」を実現するために、官民ともに実験を進めています。日本では「すいそ ふろんてぃあ」という液化水素運搬船が注目されています。川崎重工業が製造し、2021年度下期からオーストラリア~日本の実証輸送を行う予定です。

福島県をモデル創出の拠点にすることでエネルギー分野から復興に繋がるよう、「福島新エネ社会構想」として国・県・研究機関・地元経済界・電力会社・再生可能エネルギー業界団体などが取り組みをしています。

2020年3月に「福島水素エネルギー研究フィールド(Fukushima Hydrogen Energy Research Field (FH2R))」が福島県浪江町で稼働を開始。これにより、再生可能エネルギーなどから毎時1,200Nm3の水素を製造できます。

世界最大級の水素製造施設となっており、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と協定を締結しています。再生可能エネルギーから生まれた水素の活用や、再生可能エネルギー導入の推進・研究開発などで連携しています。

ちなみに、製造された水素は「東京2020オリンピック・パラリンピック」の一部の聖火リレーのトーチ用燃料として使用され、FCV車(燃料電池自動車)のトヨタの「MIRAI」も活躍しました。

セルロースナノファイバー(CNF:Cellulose Nano Fiber)の活用

セルロースナノファイバー(以下CNF)とは、植物からできた次世代の素材で、木材などから取ったナノサイズの繊維状物質です。

CNFは構造材へ利用したり、プラスチックなどの代替にもなります。国内の森林資源から調達すれば森林を守ることにもなり、設備・人材・技術などを生かした地域の産業をつくることも可能です。植物バイオマス素材は、プラスチックなどの石油由来のものと比べると二酸化炭素排出量が少ないのが特徴です。

2020年には親水性CNFで製品化されたものもあり、トイレットペーパー・トイレクリーナー・蒸着紙のパッケージなどで利用されています。二酸化炭素削減の効果が高いと言われている複合材料用途(自動車・家電・住宅建材など)は実用化に向けて進められている段階です。

CNFを使ったガソリン車では、今までの製品と比べると1台で2tの二酸化炭素の削減効果があることが試算され、これから注目されるマテリアルです。

参照:脱炭素・循環経済の実現に向けたセルロースナノファイバー利活用ガイドライン 要約版Ver.1.0(令和3年3月)

不名誉な「化石賞」を2度も受賞した日本

不名誉な「化石賞」を2度も受賞した日本

化石賞(Fossil Award)とは、CAN(Climate Action Network)という120カ国以上ある世界最大の気候変動NGOネットワーク組織がCOP(気候変動枠組み条約締約国会議)で授与する賞です。

地球温暖化対策に対して協力的に見えない国に対して皮肉を込めて贈る賞で、1999年のCOP5(気候変動枠組条約第5回締約国会議)からCOPのセレモニーの一環として毎年行われています。

実はそんな不名誉な化石賞を、日本は2度も受賞しています。

1度目は2019年、COP25期間中に化石賞を受賞。理由は石炭火力発電を継続することを示したためです。2度目の受賞は、環境大臣が脱石炭や温室効果ガス削減に対しての積極性が見られなかったためです。

化石賞は会期中に毎日3位まで発表されています。複数受賞する国は珍しくはないものの、「Coal Japan(石炭の日本)」とも皮肉られている日本は、やはり世界から見ると温暖化対策に積極性が無いイメージがあるのかもしれません。

最後に

いかがでしたでしょうか?地球温暖化の問題はあらゆる要素が混ざり合って起きており、すぐに解決できるほど単純なものではありません。ですが、私たち個人が少しでも興味・関心を持つことで、この問題解決に貢献しようという流れは大きくなるのだと思います。

WEELSでは他にも地球温暖化に関するトピックを取り上げているので、ぜひチェックしてみてください。

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