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エシカルファッションとは?注目を集める理由や、企業の取り組み事例も紹介

近年、SDGs(持続可能な開発目標)への意識が消費者レベルでも高まってきています。倫理的に正しく公平な消費行動「エシカル消費」という言葉もよく聞かれるようになり、それに応じて企業の生産・販売にも変化が起きています。

ファッション業界も例に漏れず、「エシカルファッション」と呼ばれるスタイルが登場するまでに。これまでの資本主義的な衣服の選択・購入とは異なる考えが広まっており、今までのアパレル業界の生産活動に疑問を抱いていた人たちから多くの共感を得ています。

そこで今回は、「人と地球に優しいファッション」とも呼ばれるエシカルファッションがどのようなものなのかを、注目が集まる理由や企業の取り組み事例も併せて解説したいと思います!

エシカルファッションとは

「エシカル(ethical)」は「倫理的な/道徳的な」という意味を持つ単語。では、「倫理的/道徳的なファッション」とは一体どのようなものを指すのでしょうか。

環境に配慮したファッション

環境に配慮したファッション

エシカルファッションでまず挙げられるのが、環境面への配慮です。

限りある資源や自然破壊に繋がる化学物質を過剰に使用せず、オーガニックやリサイクルされた素材を使って生産されたものがそれに当たります。

また未使用の衣服廃棄が非常に多く、焼却処分によって地球温暖化に貢献してしまっているのがアパレル業界の現状。そのため、衣類の廃棄量をなるべく少なくするような努力をしているブランドの商品を選ぶのも、エシカルファッションの1つの形だと言えます。

人に配慮したファッション

人に配慮したファッション

衣服の生産において、労働者の人権に配慮してつくられているかどうかも、エシカルファッションのポイントの1つです。

最近では、大量生産の裏側で起きている過酷な環境下での低賃金・強制労働の実態が、メディアの報道やNGO団体による告発などによって明るみに出るようになってきました。

そのような問題に向き合い、労働環境の改善や、労働者に妥当な対価を支払う努力をしている企業の商品を選択。また、その商品の価値に見合った価格設定(安すぎない値段)かどうかも考慮しながらファッションを楽しむ人たちが増えているのです。

大手ファストファッションにも広がるエシカルの流れ

アパレル業界が環境にもたらす影響

アパレル業界が環境にもたらす影響

アパレル産業は、世界の産業の中で2番目に多くCO2を排出しています。

例えば、コットンのTシャツ1枚を生産するのに、2700リットルもの水を使用。また綿花栽培で使用される農薬による生産者の健康被害や、染色で使われる重金属、環境ホルモンによる汚染も問題となっています。

これまでファッションブランドは年に2回のコレクションを行うのが一般的でしたが、2000年頃から流行の流れを加速させるファストファッションブランドが増え、2011年にはコレクションの平均回数が5回にまで増えました。

ただその流れも長くは続かず、2017年にはギャップ社傘下の「OLD NAVY」が日本を撤退。続けて「Forever21」と「American Eagle」も、2019年に日本国内の全店舗を閉店しています。

さらに、2020年にはグッチのクリエイティブ・ディレクターであるアレッサンドロ・ミケーレ氏が、コレクションの発表を年に2回までとする意向をSNSで発表しました。

ファッションサイクルの加速は企業や消費者を必要以上に疲弊させ、環境負荷を急激に早めました。そのような状況を問題視する声が大きくなり、人にも環境にも無理があるこの一連の流れにストップがかかるような見直しが少しずつ図られています。

エシカルファッションが注目されるようになったきっかけ

エシカルファッションが注目されるようになったきっかけ

ファストファッションを始め、生産コストを下げた大量生産が一般的になり、世界の大手ファッション企業は賃金の安い国々に生産を頼るようになっていきました。そんな中、2004年ごろからフランスやイギリスを中心にヨーロッパでエシカルファッションの流れが発生し、徐々に世界へと広まってきました。

大きなきっかけとなったのは、2013年に起きたラナ・プラザ崩落事故です。この事件で亡くなった方は1,100人、負傷者は2,500人に及びました。

ラナ・プラザはバングラデシュの商業ビルで、当時海外ファッションブランドの縫製工場が複数入居しており、4,000人もの従業員が働いていました。ビルのオーナーは欧米企業の需要に応えようと違法な増築を繰り返し、建物の安全管理を怠っていたことが後からわかっています。

この事件がきっかけとなり、ユニクロを含む世界のアパレル企業が「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全性に関する協定(The Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh)」に署名。アパレル企業は生産者に対してきちんと責任を持つべきという考え方が確立され、エシカルファッションの概念が社会に急速に浸透しました。

そして、 「ELLE(エル)」や「VOGUE(ヴォーグ)」など、世界のファッション誌でSDGsやサスティナブルについて大きく取り上げられるようになりました。今ではニュースやSNSで目にする機会が増え、消費者もエシカルファッションの重要性に気づき始めています。

エシカルファッションに求められる条件

エシカルファッションに求められる条件

では、実際どのような洋服がエシカルファッションであると言えるのでしょうか。

イギリスで2006年に発足したエシカルファッション団体「Ethical Fashion Forum」が掲げているエシカルファッション10の基準を見てみましょう。

  1. 安価なものを使い捨てるファストファッションに反対する
  2. 生産者の公平な賃金、労働条件、権利を守る
  3. サステイナブルな生活を支持する
  4. 有毒な農薬や化学物質の使用問題に取り組む
  5. 環境に優しい生地や部品を使用し・開発する
  6. 水の使用を最小限にする
  7. エネルギー効率やゴミの問題に取り組み、リサイクルを行う
  8. ファッションのサステナビリティ基準を開発・促進する
  9. 新たな取り組みについて知らせ、人々の意識向上を促す
  10. 動物の権利を守る

参照:SUSTAINABLE FASHION TERMINOLOGY

これ以外にも、ブランドによってはエシカルに関する独自の基準や指針を定めている場合もありますが、大きく分けて

  • 生産に関わる公平な労働環境
  • 製造過程の環境負荷を減らす
  • 環境と動物に優しい素材

の3つが絶対条件と言えます。

海外では「Good On You」という、ブランドのエシカル度を評価するアプリも登場しています。自分の選ぶブランドや服が「どれだけエシカルか」を気にする人が増えてきていることが分かります。

エシカルファッションへの企業の取り組み事例

エシカルファッションへの企業の取り組み事例

アパレル企業においてエシカルファッションの追求は、今後の生き残りをかけた必須事項となっています。

例えば、アメリカのファッションブランド「カルバンクライン」や「ラルフローレン」を始め、「グッチ」や「プラダ」といったラグジュアリーブランドも続々とファーフリー(毛皮を扱わない)を宣言しています。

かつてファッションステータスだった毛皮も、今や反感を買う素材となりました。

そんな現状を踏まえ、これから伸び代の大きいエシカルファッションを引っ張っているブランドの一部を最後にご紹介します。

ピープルツリー

ピープルツリー

イギリスで生まれたフェアトレードの先進的ブランド。オーガニックコットンを始めとした天然素材を、人と環境に優しい方法で生み出し、洋服やアクセサリー、雑貨などに展開しています。製品を作って売るだけでなく、環境問題やサステナビリティに関する啓発や情報発信も積極的に行っています。

ピープルツリー

パタゴニア

パタゴニア

アメリカ発信のアウトドアブランド。2025年までにカーボンニュートラルを目指すとし、再生可能エネルギーや再生素材の利用を進めています。

また、製品が作られる過程で発生する環境負荷をフットプリントとして公式サイトに公開するなど、消費者に対する透明性を高めています。売上の1%は自然環境保護のために寄付されており、商品を購入することで環境保護に貢献することができます。

パタゴニア

ステラ・マッカートニー

ステラ・マッカートニー

イギリス生まれのレディースブランド。代表でありデザイナーのステラ氏はベジタリアンで、ブランド創設当初から動物保護や環境保全に熱心に取り組んでいます。

ファーやレザーを一切使わず、オーガニックコットンやリサイクルカシミアなど環境に配慮した素材を積極的に採用しています。デザイン性だけでなくサステイナブルな強い方針がファンを惹きつけています。

ステラ・マッカートニー

H&M

H&M

スウェーデン発のファストファッションブランド。「ファッションとクオリティを最良の価格で」をコンセプトに、数々のサステイナブルな取り組みを行っているのが特徴です。

2030年までに100%リサイクル素材または持続可能な原料を使用することを目標としており、オレンジファイバーやグレープレザーといったオリジナル素材の開発を行っています。また、独自のサステナビリティ・コミットメントを生産者と結び、公正な賃金・労働環境を推進しています。

H&M

ユニクロ

ユニクロ

「服のチカラを、社会のチカラに。」をスローガンに、地球・社会・人の調和と持続的な発展を目指したサステイナブル活動に取り組んでいます。

特に2001年から行っている自社製品のリサイクルは大きな成功事例の1つです。全店舗にリサイクルボックスを設置し、集まった服を世界各地の気候や宗教に合わせて送ったり、新しい製品や代替燃料に加工・再生しています。大企業だからこそできるリサイクル・リユースの仕組みを作り上げています。

ユニクロ

この他にも、タイのチェンマイにある「バーンロムサイ」や、スウェーデン発のデニムブランド「Nudie Jeans」、オランダの「MUD jeans」など、小さくてもユニークにエシカルファッションを追求するブランドが数多く存在しています。

最後に

ファッションスタイルは個性であり、どのような考えで、どのようなものを選ぶかは個人の自由です。必ずしもエシカルファッションが絶対正しいというわけでもなく、エシカルを謳っていても実態が異なる可能性を考える必要もあるでしょう。

しかし、衣服の生産過程で使われる素材や、環境にかかる負荷、労働者の人権にまで想像を働かせて購入する消費行動は、よりよい未来をつくるためのSDGsに少なからず貢献していると言えます。もし少しでもエシカルファッションに興味がある方は、ぜひ今できることから始めてみてはいかがでしょうか?

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