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地域おこし協力隊ってどうなの?現役隊員がメリットやデメリットを解説

近年は、都市から地方へ移住して地域の活性化に従事する「地域おこし協力隊」がメディアやSNSなどで注目されるようになってきました。しかし、地方・田舎移住をしたい方には魅力的な制度ではあるものの、自分に本当に合っている仕事なのかわからないという方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、現役の地域おこし協力隊として活動する私Maiがリアルな実態をお伝えすべく、日々感じているメリット・デメリットをまとめました。地域おこし協力隊に興味がある方はぜひ最後まで読んでみてください!

地域おこし協力隊とは

現代の日本はさまざまな経済活動が都市部に集中していることで、地方から都市へ働き手世代の人口流出が進んでいます。

そのような一極集中や過疎化といった状況を打破すべく、内閣府はSDGs(持続可能な開発目標)を原動力とした地方創生を推進。総務省は地域活性化・地方のまちづくりの一環として2009年に「地域おこし協力隊」の制度を開始しました。

以来、全国の地方自治体が毎年、その土地の地域課題に合わせて人員を募集しています。初めは89人だった協力隊員も、令和元年度には5,503人まで増えています。

募集要件や任務は自治体によりさまざまですが、1) 都市から勤務地域へ住民票を移すこと、2) 任期が1~3年であることが主な共通事項です。また、協力隊員には報酬のほかに活動費が充てられ、任務遂行にかかる経費に使うことが許されています。
 
自治体によって異なりますが、大きく分けると具体的な任務が定められている「ミッション型」と、地域課題を自分で見つけて取り組む「フリーミッション型」の2種類があります。

ミッション型は地場産品の開発や、観光促進、地域住民の支援、移住促進などの決まったテーマに沿って活動します。移住希望地が決まっていない人は、募集要項のミッションに合わせて移住地を探すこともできます。

参考:総務省「地域おこし協力隊とは」

現役の地域おこし協力隊インタビュー記事もチェック:住み続けられるまちづくり。人口2,000人の田舎町を住みたくなる町へ

地域おこし協力隊のメリット・デメリット

地方移住を考えている人にとって、仕事や地域の人づきあいは心配の種なのではないでしょうか。地域おこし協力隊の制度を利用することで、これらの不安を解消することが出来るかもしれません。

しかし、実際に地域おこし協力隊として働いてみて、「想像していた仕事とは違った」「自分にはあまり合わなかった」という声も聞かれます。また、募集要項だけでは具体的なところまでイメージができず、やっていけるのか心配という方もいるでしょう。

そこで、ここでは現役隊員が日々感じている、地域おこし協力隊になることのメリットとデメリットをお伝えしていきたいと思います。

地域おこし協力隊のメリット

地域おこし協力隊になることで得られるメリットはたくさんあります。その中でも特に私が特権だなと感じているポイントを3つお伝えします。

地域に溶け込みやすい

地域おこし協力隊の中には、UターンやJターン、孫ターンなど、もともと関係のある土地に移住する人もいます。一方で、私のように縁もゆかりもない地域に移住する場合は、その地域にうまく溶け込めるか不安に思うことがほとんどでしょう。そういった点で言えば、地域おこし協力隊は基本的に自治体の所属となるため、移住当初から一定の信頼を得やすいです。

また、協力隊制度が10年以上続いていることもあり、すでに先輩の地域おこし協力隊が定住している地域も多く、住民や移住者とのネットワークが構築されています。都市に比べて人口が少ないぶん、人と知り合えるスピードが速く、それに加えて地域おこし協力隊という肩書が後押ししてくれるので、移住してすぐコミュニティに入り込みやすいのが最大のメリットだと感じています。

一定の収入が確保される

地方を移住地として選ぶときに必ず頭をよぎるのが「仕事はあるのだろうか」という疑問ではないでしょうか。都市よりも家賃が安いとはいえ、慣れない土地で収入がないのは当然不安です。

地域おこし協力隊は1~3年と任期が限定されているものの、その間は特別な理由がない限り収入が確保されます。また多くの場合、家賃・インターネット代・ガソリン代などの補助も出るため、スムーズに移住生活を開始することができます。

大切な国の税金が給与となっているので、もちろん任務に一生懸命取り組む必要はあります。その上で任期中に地域で仲間をつくったり、起業の準備を進めたりなど、定住に向けて環境を収入を絶やさずに整えることができるのは大きな安心材料になると言えます。

第二の故郷ができる

私が現在住んでいる地域では、移住者を続々と増やしている地域おこし協力隊の仲間がいます。その人に「今まで移住してきた人の共通点は何ですか?」と質問を投げかけたところ、「田舎を持ってない人が多い。」という答えが帰ってきました。

私自身、実家も親戚の家も都市部にあり、「田舎に帰る」ということをしたことがありませんでした。田舎に触れたことがなかったからこそ、地方での暮らしが魅力的に感じられ、抵抗なく受け入れることが出来たのだと思います。

移住した今は実家が1つの故郷ですが、今住んでいる場所が第二の故郷のような気持ちです。住まいを1つの拠点に絞ることは今やリスクでもあり、反対に2拠点、3拠点と居場所を作ることで人生の可能性が広がります。地域おこし協力隊はそんな多拠点生活を後押しする制度でもあると感じています。

地域おこし協力隊のデメリット

地域おこし協力隊はとても優れた制度ですが、当然メリットばかりではありません。地域おこし協力隊の講習会でよく議題に上がる問題点や、私が実際に活動していて感じるデメリットを3つ挙げていきます。

地域課題とやりたい事の不一致

「与えられているミッション=自分のやりたいこと」であるのが理想的ですが、必ずしもそう上手くはいかないケースもあります。

地域が抱えている課題はたくさんあり、地域のためにミッションを果たそうと奮闘しますが、やりたいことと一致していないと、その先の不透明さに不安を覚える方もいるでしょう。

地域おこし協力隊としてやりがいを感じながら活動していくには、遂行する任務と自分がその地域で実現したいこととのバランスを適度に保つことが重要になってきます。

自由なようで自由でない

所属する自治体によって勤務条件は異なりますが、公務員や会社員と比べてフリーランスのような身軽さと自由さがあるのが地域おこし協力隊の魅力の1つです。

しかし、基本的に自治体のルールに従って業務を進めていく必要があるので、往々にしてスピード感がなく、融通が利かないことが多いのが実情です。特に、規定にないことや前例がないことは滞りがちで、思うようにプロジェクトを進められないこともあります。

卒業後の不安

地域おこし協力隊の任期中にはさまざまな仕事が発生します。ただ、それらの仕事は事業として成り立っていないことが多く、いわゆるお手伝いやボランティアになってしまっていることがほとんどです。

地域おこし協力隊を卒業した後に、これらのお手伝いを無給で全て続けながら生活していくことは恐らく不可能でしょう。そうなると事業として成り立たせる仕事と、収益は発生しないが自らの意思で続ける仕事、続けるのは困難な仕事の3つに振り分けて整理していく必要があると感じています。

地域おこし協力隊に向いている人・向いていない人

昨年(2020年)は、移住促進の一環で地域おこし協力隊に興味のある人たちと話す機会が何度かありました。相談会のような雰囲気でさまざまな質問を頂き、その中で地域おこし協力隊に向いている人・向いていない人という話をさせていただいたこともあります。

そこで、ここでは現役の隊員として活動している私が思う、地域おこし協力隊に向いている人・向いていない人をまとめてみました。

地域おこし協力隊に向いている人

自分で仕事を作れる人

地域おこし協力隊は大抵の場合、市役所や町役場の所属になります。しかしながら一般の職員さんのように具体的な実務に関わる指示はほとんどありません。

そのため、フリーランスや個人事業主のようなスタンスで自ら仕事を見つけ、取り組んでいく必要があります。逆に言えば自分で課題や目標を見つけて、計画的に動いていける人が地域おこし協力隊に向いています。

幅広い人と仲良くなれる人

地域おこし協力隊が着任する地域は、高齢化の進んだ過疎地域が多いです。ご近所さんのほとんどが60歳以上、もっと言えば70歳以上ということも珍しくありません。

それでも自分のやりたい活動を円滑に進めていくには、地元の方の応援なくしてはかないません。地元のキーマンや世代の離れた住民、自治体の職員、移住者など、幅広い層の人と抵抗なく繋がれる人が地域おこし協力隊にふさわしいでしょう。

変化を起こすのが好きな人

単にいきなり引っ越してきた移住者よりも、格段に新しい風を起こしやすいのが地域おこし協力隊です。立場上地域の人からの課題をすくい上げやすいですし、自治体を始め公共からの支援を受けやすいです。そういった点で言えば、達成したい物事がある人や、刺激を与えたり与えられたりすることが好きな人に向いていると言えます。

田舎が欲しい人

先述した通り第二の故郷ができるのが地域おこし協力隊です。都会生まれ都会育ちの人や、帰省する田舎を持っていない人にはもってこいの制度だと感じています。コロナウイルスの流行で好きなときに自由に旅行ができなくなっている今、田舎に拠点を持っておくことは自らの経験値や生きる力を養えるという大きなメリットにもなりえます。

地域おこし協力隊に向いていない人

自己管理できない人

地域おこし協力隊は最長3年まで続けることが出来ます。3年という年月は長いようですが、毎日をなんとなく過ごしているとあっという間に過ぎてしまい、卒業後に何も残らないという可能性も大いにありえます。

一人社長になったつもりで、毎日のスケジュールの組み立てや体調管理を当たり前のようにできる人でないと務まらないと言えるでしょう。

指示がないと動けない人

地域おこし協力隊には自治体から担当職員が充てられることがほとんどです。しかし、彼らは直属の上司という訳ではないため、細かく指示や指導をしてくれることはあまりありません。

それをよいことに何も行動しない人や、何をすべきかを自分で見つけられない人は、地域おこし協力隊には不向きだと言えます。

課題ばかりに目が行ってしまう人

先にも触れましたが、着任地域にはたくさんの課題が眠っています。それらの課題全てに対応しようとしても現実的ではありません。

課題が見つかったら自分のミッションや目標に合わせて取りかかる課題を絞り込み、解決に向けて具体的な行動を進めていく必要があります。自分一人にできることを過信せず、できないことはいさぎよく割り切っていくことが大切です。

自ら壁を作ってしまう人

地域おこし協力隊は地域に溶け込みやすいのがメリットです。にも関わらず興味を持って話しかけてくれる人に壁を作ってしまうと、本来やりたいことを進めにくくなってしまいます。

挨拶することを面倒くさがってしまう人や、地域のルールや慣習にあからさまにそむいてしまう人は、共感や応援が得られず孤立してしまう可能性もあります。

地域おこし協力隊の成功・失敗事例

地域おこし協力隊は会社員でもなく、公務員でもなく、起業家でもない不確定要素の多い存在です。そのため、この制度をどう活用して自分の仕事に落とし込んでいくかは、個人の捉え方と行動にかかっています。

ここでは現役隊員が実際に目にした、地域おこし協力隊の成功事例と失敗事例をご紹介します。

地域おこし協力隊の成功事例

地域おこし協力隊は起業ありきではないものの、任期中に事業の土台を作って、卒業後に起業する例は少なくありません。

起業することで地域に新たなビジネスが生まれ、本人の仕事になり、地域と本人双方にとって良い流れが出来ます。私が住む地域の協力隊OB・OGの中にも例に漏れず起業した人たちがいます。

一人は町の中心エリアにある古民家をリノベーションしてゲストハウスを作り、外国人や長期的に旅をしている人など、今まで町に来ることがなかった層を呼び込むことに成功しています。また、協力隊OBと地域の人との結びつきが強いので、訪問客と地域住人を繋げるパイプ役にもなっています。

もう一人は地元産業の柱でもある林業を舞台に起業し、革命に近い大きな変化をもたらせています。地域にあふれる木や森といった資源を、単なる材料としてではなく価値のあるコンテンツとして捉えてビジネスを成り立たせています。当たり前だと思われていたものを別の角度から見つめ直すことで、新たなものが生み出されています。

ゲストハウス内子晴れ(内子町の地域おこし協力隊OB 山内 大輔さん)| ホームページはこちら

地域おこし協力隊の失敗事例

国も自治体も地域の人も、地域おこし協力隊が地元に根付いてくれることを願っています。それでも何かしらのネジがはまらずに着任地を去っていく協力隊も中にはいます。これは本人ばかりが悪い訳でもなく、地域のせいでもなく、確率論的にありうることなのだと思います。

私の周りでも任期途中で辞めていった人がいました。地域住民や自治体の人とうまく連携を取ることができず、着任当初やりたかったことを実現できなかったことが1つの原因だったように思います。何をするにしてもやはり一人では達成できないので、周りの人たちと積極的にコミュニケーションを取って、お互いに協力体制を作ることが大切だと感じています。

最後に

地域おこし協力隊制度にはまだまだ多くの課題がありますが、始まった当初に比べてかなり地域に浸透し、仕組みも整備されてきています。一人の人間に出来ることは限られていますが、それでも都市から地方に移住することで間違いなく新しい風の流れができます。

自治体によっては家賃やガソリン代が補助される場合もあり、最近では家族で移住する地域おこし協力隊も多いようです。地方移住を考えている方は選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。

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